こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命

otello2013-04-13

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命
The Place Beyond the Pines

監督 デレク・シアンフランス
出演 ライアン・ゴズリング/ブラッドリー・クーパー/エヴァ・メンデス/ベン・メンデルソーン/ローズ・バーン/マハーシャラ・アリ/ブルース・グリーンウッド/ハリス・ユーリン/レイ・リオッタ
ナンバー 86
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

心に虚無を抱き、他人の心の奥の虚無も見透かすような視線。命がけのスタントを糧に刹那的に生きてきたバイク乗りは、己に子がいると知った時、突然愛情に目覚め、きちんと育ててやりたいと願う。物語はそんな不器用な男の転落と、彼の子が運命に翻弄される姿を描く。うなりを上げるエンジン、軋むタイヤ、跳躍するボディ、彼が操るバイクは寡黙な本人に代わって怒りや焦り、苛立ちや緊張を饒舌に語り、孤独な哀しみに昇華されていく。躍動感あふれるカメラワークとしっとりとした味わいの奥行きある風景、緩急を使い分けた映像は深い余韻を残す。

移動遊園地の曲乗りライダー・ルークはロミーナと再会、彼女が自分の子・ジェイソンを出産していたと知って養育費を稼ぐために銀行強盗を繰り返す。ある時、新米警官のエイヴリーが逃走中のルークを発見、民家に追い詰める。

連続強盗事件を解決したエイヴリーは一躍ヒーローになる。一方で同僚警官の腐敗に胸を痛めている。人当たりはよく正義感は強いが出世欲はもっと強い。その陰で良心の疼きもぬぐいきれない。今さら明かしても誰のメリットにもならない秘密を抱えたまま、エイヴリーは日の当たる道を選ぶ。犯罪を憎み法の執行官としてのプライドも高いエイヴリーが隠し続ける弱さと苦悩、善悪では単純には割り切れない人間の複雑な心理が非常に繊細に再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

時は流れ、エイヴリーの息子・AJはジェイソンと悪友になる。親同士の因縁が2人の友情に影響を与え、やがてジェイソンはルークに何が起きたかを調べ出す。そして忌まわしいが避けて通れない過去をたどり着き、犯罪者だったが確かに愛してくれていたことも感じ取るのだ。語られなかった真実と封印した記憶、一枚の写真に凝縮された15年もの歳月と世代を超えた人の思いは、圧倒的な、しかしあくまで抑制の効いた感情となって押し寄せる。“それでも人生は美しい”、そう思わせる作品だった。

オススメ度 ★★★★

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