こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

桜、ふたたびの加奈子

otello2013-04-15

桜、ふたたびの加奈子

監督 栗村実
出演 広末涼子/稲垣吾郎/福田麻由子/高田翔/江波杏子
ナンバー 89
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

愛娘の死を受け入れられない母親は、娘がまだ生きていると言い張って夫を困らせる。後悔と自責、深い苦悩はさらに他人が産んだ子供をわが子の転生と彼女に信じさせてしまう。物語はそんなヒロインが徐々に壊れていく姿を丁寧に追う。妄想が頭から離れない、そして真実に思えてくる、彼女が普通の暮らしの中でふとした瞬間に見せる狂気が胸をかきむしるバイオリンの音色と共に再現され、揺れ動く心を象徴する不安定な映像は極限にまで張りつめた糸のようで、いつ感情が爆発するかとハラハラさせる。もはやサスペンスともいえる演出は恐ろしいまでの緊張を見る者に強いる。

娘の加奈子を交通事故で失った容子は、絶望のあまり自殺を図ったりするが、ある日、偶然知り合った女子高生・正美の出産に立ち会う。生まれた赤ちゃん・菜月に加奈子と同じ場所にあるホクロを発見、容子は菜月が加奈子の生まれ変わりだと言い出す。

その後も執拗に菜月に付きまとい手なずけようとする容子。シングルマザーで育児ノイローゼ気味になった正美は容子の好意と疑わず、菜月の世話を容子に任せたりする。少し大きくなった菜月が加奈子とは全く違う嗜好の持ち主だと判明しても、容子の妄信はとどまるどころか増大していく。そのあたり、暴走しそうになる気持ちを必死で抑制する容子のアンバランスさを広末涼子がリアルに演じ切っていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて容子は菜月を養子にもらいたいと正美に申し出る。きちんと育てられず自信を失っていた正美は、それを機に母親としての自覚を取り戻す。ところが、容子が正美を諦めることで加奈子への未練を断ち切ると思いきや、また別の子供が加奈子の生まれ変わりに見え始める。しかも今度は夫までが同意するのだ。犬が伏線になっているとはいえ、突然の転調には開いた口がふさがらなかった。幽霊の電話などというオチまでついているが、やっぱりこの作品はホラー映画だったのか???

オススメ度 ★★

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