こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コズモポリス

otello2013-04-17

コズモポリス COSMOPOLIS

監督 デヴィッド・クローネンバーグ
出演 ロバート・パティンソン/ジュリエット・ビノシュ/サラ・ガドン/ポール・ジアマッティ/サマンサ・モートン/マチュー・アマルリック
ナンバー 90
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ネズミを通貨にすれば、“持てる者”はネズミ算式に資産を殖やしていく。しかし、増えすぎたネズミは人間の暮らしを脅かし、屋台骨を食い荒らしてしまう。そんなたとえ話に自ら首を突っ込んだような青年の破滅に至るまでの長い一日は、皮肉と暗喩にあふれた禅問答のごとき抽象的で難解な言葉の羅列とともに、マネーゲームという虚業の勝者の空疎な実態を象徴する。すべてはカネで買えると信じて欲望を満たしてきた主人公がたどり着いた底なしの絶望と虚無。行き過ぎた資本主義の希望なき未来を映画はシニカルに描く。

28歳にして巨万の富を築いたエリックは、オフィスを兼ねたストレッチリムジンに乗って散髪に出かける。だが道路は大渋滞、ほとんど走れないリムジンにビジネスパートナーや医師、愛人などが訪ねてくる一方、妻にはセックスのにおいがすると敬遠される。

リムジンに積み込まれたパソコンから指揮を執るエリック。小さな空間から経済を動かし、今や“サイバー資本”と呼ばれ、民衆からそれこそネズミ並に嫌われている。中国元取引で致命的な損失を出し己の栄華の終焉が近いと知っているにもかかわらず、エリックはバブリーな生き方を省みない。街では貧困に耐えかねた民衆が暴発寸前にまでフラストレーションをため込んでいる。深刻な社会格差、リムジンの内と外はドア1枚しか隔てられていない。その薄さがエリックの帝国の足場がいかにもろいものかを饒舌に物語る。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

何事も均衡が保たれてこそ健全なのに、エリックは前立腺が非対称なうえ、頭の片側だけしか調髪しない。彼の肉体は、ひとにぎりの富裕層と大多数の貧困層といった著しくバランスを欠いた世の中のメタファーなのだろう。やがてエリックは彼の命を狙う元ディーラーとお互いに銃を構えて対峙する。そこでも延々繰り返される形而上の会話も混沌を極め、さっぱり理解できなかった。人生も世界も、もっと単純だと思うのだが。。。

オススメ度 ★★

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