こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ポゼッション 

otello2013-04-20

ポゼッション THE POSSESSION

監督 オーレ・ボールネダル
出演 ジェフリー・ディーン・モーガン/キーラ・セジウィック/マディソン・ダベンポート/ナターシャ・カリス/グラント・ショウ
ナンバー 85
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

喉の奥でうごめく2本の指、モニターがとらえた怪しげな顔。少女の体内には確実に何かが巣食っている。それは少しずつに彼女の精神を蝕んでいく。物語はアンティーク箱の封印を解いたことから起きる、人間と邪悪な存在の戦いを描く。ここに登場する“邪悪”はとり憑くだけでなく、きちんとした実態を持つ。食べ、話し、暴れ、物理的な作用をもたらして関わった人々に危害を加えるのだ。その行動に合理的な目的があるとは思えず、ただ人の心と肉体をむさぼるのみ。このあたりの、理屈では理解できないわけのわからなさと、常に緊張を強いる冷たい映像が背筋に悪寒を誘う。

離婚したばかりのクライドは2人の娘・ハンナとエミリーを連れガレージセールに行く。エミリーはそこで小さな木製の箱を購入、箱の中から不気味な小物を見つける。その日から箱の周りで不可解な事件が頻発、エミリーも徐々に暴力的になる。

部屋中を飛び回る大きな蛾、冷蔵庫をあさる小動物など、クライドの新居は得体のしれない生き物に荒らされ始める。さらに箱のふたの内側に張られたくすんだ鏡に映るエミリーの顔は白目をむき生気を失っている。正気と狂気が入り混じり、普段通りにしている時間が短くなっていくエミリー。彼女は自身の変化に気づきつつも抗うすべを持たず、一度口から入った悪魔を自力では追い出せない。クライドは解決策を求めて箱を専門家に見せ、それがユダヤ教徒の手によるものだと知る。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

箱を壊そうとした老婆や学校の先生が見えない力にいたぶられたり、憑依されたエミリーが獣じみた跳躍力で両親を襲うなどのシーンは過去のホラーでもよくあるパターン。だが、この作品ではより動きが非現実的になり、いかにも超常現象に操られているような効果を上げている。そして、普段は母が恋人と同居する家で暮らすエミリーは、本当はクライドが大好き。クライドも娘を誰よりも大切にしている。父と娘の絆、家族の再生もまたこの映画のテーマだった。


オススメ度 ★★*

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