こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハッシュパピー バスタブ島の少女

otello2013-04-22

ハッシュパピー バスタブ島の少女 BEASTS OF THE SOUTHERN WILD

監督 ベン・ザイトリン
出演 クヮヴェンジャネ・ウォレス/ドワイト・ヘンリー
ナンバー 94
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

小さな島の人里離れた産廃置き場のトレーラーに住む少女。母はなく、とても正気に見えない父親は育児放棄一歩寸前、かろうじて鳥の丸焼きが与えられている。一応学校に通ってはいるが文明の恩恵を受けているとは思えない。父と先生、飲んだくれの知人、ゴミ溜めのごとき島が世界のすべて。両親の愛情や豊かな生活という存在など、比較する対象がないゆえに特に不満を持つわけでもなく日々たくましく成長している。映画はそんなヒロインの目を通して、環境を守り故郷を保全する大切さを説く。ところが、その映像化は脈絡のない散文詩のようにまとまりを欠き、エピソードの因果は合理的ではない。そもそも6歳児のイマジネーションなのだ、“考えるのではなく感じろと”言われれば返す言葉もないが。。。

父・ウィンクと暮らすハッシュパピーは冒険と発見の日々を送っていた。ある日島を大嵐が襲い、ほとんどの陸地が水没する。動物は死に絶え、食料が底を尽きかけると住人達は島を囲む堤防を爆破して島の水を排出するが、現れた土地は荒れ果てていた。

ハッシュパピーとウィンクは彼らなりの愛情で結ばれている。お互いに気持ちを表現する方法を持たず喧嘩が絶えないが、ウィンクは島でのサバイバル術をハッシュパピーに教え、ハッシュパピーはウィンクに寄り添うことで応える。一見虐待にも見えるこの親子関係は、価値観の違う人間には奇妙に見えるはずだが、それはそれでバランスがとれているのだろう。しかし、彼らの根本的な感情や思考回路が理解できず共感には至らなかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

後にハッシュパピーは洋上のナイトクラブに連れて行かれるが、そこで出会った女に母の面影を見る。母の持ち物に囲まれていたとはいえ、母を知らずに育った彼女がワニのから揚げだけで初対面の女に愛情を覚える不思議。他にもあらゆるシーンがメタファーに満ちているが、結局何の象徴かわからなかった。

オススメ度 ★★

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