こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

藁の楯 わらのたて

otello2013-05-01

藁の楯

監督 三池崇史
出演 大沢たかお/松嶋菜々子/岸谷五朗/伊武雅刀/永山絢斗/余貴美子/藤原竜也/山崎努
ナンバー 103
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

幼女性愛を抑えきれない者、復讐に正気を失った者、カネに目がくらんで凶行に走る者、そして買収されて恥じない者。それらドロドロした欲望が渦巻く中、ひとり己の信じる正義に徹する男もまた、大きな葛藤を抱えている。守れなかった命と守らねばならない命、映画はその間に横たわる落差に苦悩しつつ自らをを説得し、何とか折り合いをつけて良心を納得させようとする人々の姿を追う。殺してやりたいほど憎い上カネの魅力も断ちがたい、いかに警察官とはいえ、おいしいエサを目の前にぶら下げられると理性を狂わせてしまう、そんな心の弱さをリアルに再現する。

孫娘を惨殺された大富豪の蜷川は犯人・清丸の首に10億円の懸賞をかける。仲間に襲われた清丸は福岡県警に出頭、警視庁SPの銘苅と白岩、刑事の奥村と神箸、関谷が東京までの護送にあたる。

カネ欲しさに次々と清丸を狙う暴徒、彼を取り調べる刑事や警護に当たる機動隊員も例外ではなく、武器を携帯しているだけに始末が悪い。しかも清丸の現在位置がネットに筒抜けで、銘苅らは同行の刑事に中に裏切り者がいるのではと疑い始める。もはや頼れるのは自分のみ、銘苅は死んだ妻のことを持ち出されて気持ちを揺さぶられるが、必死で挑発に乗らないよう我慢する。飛行機も新幹線も使えない、道路は検問中、さらにいつ襲撃を受けるかわからない状況で銘苅らは清丸を連れて絶望的な旅を続ける。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

1人また1人と脱落していく護送部隊、残った銘苅もとうとう清丸の口に銃口をねじ込みむ。こんなクズは殺しても殺し足りない、だが、10億円の懸賞ゆえに思いとどまるという皮肉。任務のために感情をコントロールしてきた銘苅ですら、“怒り”の誘惑は強烈なのだ。結局、最後まで悪魔性を貫いた清丸こそがこの物語の唯一の勝者。あらゆる人間の本性を暴き出した彼の高笑いが聞こえてくるようだった。

オススメ度 ★★★

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