こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

私は王である!

otello2013-05-15

私は王である!

監督 チャン・ギュソン
出演 チュ・ジフン/イ・ハニ/イム・ウォンヒ/キム・スロ/キム・ソヒョン
ナンバー 63
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

王になりたくない王子とお嬢様を救いたい奴婢。顔がそっくりな2人は入れ替わり、それまでの居場所と正反対の世界を体験する。王子は国民の暮らしがいかに厳しく苦しいかを学び、奴婢は退廃と虚栄に満ちた王宮の日常に窮屈さを覚える。まるで「王子と乞食」の朝鮮版というべき作品、チュ・ジフンがインテリ王子と腕っ節の強い奴婢の二役を演じ分け花を添えている。物語は後に偉大な朝鮮王・世宗となる王子が身分を秘して諸国を放浪するうちに成長していく姿を追う。庶民の常識は王宮の非常識、王宮の常識は庶民の非常識、映画は2人が己の育った環境の常識が通用しないことで受けるカルチャーショックをコメディタッチで描き時折心をくすぐるが、突き抜けた笑いにまでは昇華できていなかった。

朝鮮王の三男・忠寧は兄にかわって世子(王太子)に指名されるが、読書三昧の気ままな日々を捨てるのが嫌で王宮から脱出し、奴婢のドクチルと衝突、ドクチルの衣服を奪って逃走する。だが、忠寧は奴婢と間違われ、地方に売られてしまう。

一方のドクチルは偽世子に仕立て上げられるが、愛するお嬢様が王宮に捕らわれていると聞かされると世子を演じる決意をする。食べなれないごちそうを腹いっぱい詰め込んだり、排泄係の女官に戸惑ったり、正室に正体を見破られそうになるのは「王になった男」と同じシチュエーションだが、こちらのほうがより表現がコミカルな分、テンポがよい。また、忠寧は土木工事に駆り出された労働者のケガを治療するうちに無力と思っていた自分でも民衆の役に立てると知り、王たる者の使命を自覚していく過程は力強く勇ましい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて王位後継者お披露目の場に現れた忠寧は、大国の威光を盾に威張り散らす明国の使節に向かって朝鮮人の民族のとしてのプライドを高らかに宣言し、明使節の非礼をとがめる。中国の周辺諸国に対する尊大な態度は21世紀の現在も全く変わっていないだけに、このシーンは日本人でも溜飲が下がる思いだった。

オススメ度 ★★

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