こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

俺はまだ本気出してないだけ

otello2013-06-18

俺はまだ本気出してないだけ

監督 福田雄一
出演 堤真一/橋本愛/生瀬勝久/山田孝之/濱田岳/水野美紀/石橋蓮司
ナンバー 147
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

本当にやりたい仕事は何か。サラリーマンとして会社の歯車になることではないのは確か。しかし腕一本でカネを稼ぐほどの“手に職”もない。今はグータラ三昧の生活を助走期間と定め、天職を見つけようとしている。物語はそんな男の根拠なき自信と言い訳ばかりの日常を描く。マンガ家になる目標は立てた、それなりに努力はしている、でもやる気は長続きしない。それでも時々、“今の自分はなりたかった自分なのか”“ほんとうにこのままでいいのか”と自問自答する。「四十にして惑わず」の心境とは程遠い40男のトホホ感全開の彷徨も、「人生300年」と考えれば妙に納得してしまった。

会社を辞めて朝からゲーム三昧のバツイチ男・シズオは、同居する父に怒鳴られ、一人娘の鈴子にはあきれられる始末。ある日、本屋で手にしたマンガに天啓を受けマンガ家になると宣言、描いては出版社に持ち込むがなかなか編集者に認めてもらえない。

同時にファーストフード店でバイトし、幼馴染みの宮田と飲んでは愚痴をこぼしている。生きる方向を見失っている市野沢と親しくなったりもする。そして何度原稿がボツになってもそのポジティブさは家でも外でもまったく変わらず、相変わらず強気な姿勢を崩さない。風采は上がらず結果も出ていないにもかかわらず、カン違いし続けるシズオ。実は現実に目を向けるのが怖くて仕方ないから妄想と虚勢の壁を周囲に張り巡らせているのだろう、彼のテンションの高さは先行き不透明な未来に対する不安の裏返しなのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

シズオの短編マンガは佳作に選ばれたりもするがデビューはいまだ道半ば、宮田の息子にまで“シズオみたいにはなりたくない”といわれてしまう。だが、鈴子だけは己を犠牲にして健気にシズオの夢を応援してくれている。無責任で無計画な男でも、娘の気持ちは心にしみる。今度こそ「本気を出す」と鈴子の前で叫ぶが、やっぱり怠け者のまま年を取ってしまいそうなシズオ。彼の生き方は、それほど頑張らなくても人生はなるようになると思わせてくれた。

オススメ度 ★★*

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