こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

真夏の方程式

otello2013-06-30

真夏の方程式

監督 西谷弘
出演 福山雅治/吉高由里子/北村一輝/杏/山崎光/塩見三省/白竜/風吹ジュン/前田吟
ナンバー 161
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

両親と娘、それぞれが闇を抱えて生きている。それは、打ち明けられないほど重く、深刻な秘密。そして、お互いに隠しているのを知っていて気づかぬふりをしている。今の幸せを壊したくない、できるならば自分が罪をかぶっても構わない。そんな愛ゆえの自己犠牲に対し、物理学的なアプローチはどこまで有効か。複雑に絡み合った過去と現在、物語は開発派と反対派が対立する町で起きた殺人事件を巡って、二重三重に張り巡らされたトリックを見破る物理学者の苦悩を描く。本当に守りたいのは未来、計算式では絶対に解き明かせない人間の心、その迷宮に主人公が挑む。

海底資源探査のアドバイザーとして海辺の町にやってきた湯川は、宿泊していた旅館で元刑事の不審死に遭遇する。元刑事の行動を調べるうちに、15年前のホステス殺人事件との関連が浮かび上がる。

何故元刑事は口を封じられたのか。業務上過失致死および死体遺棄に偽装された元刑事の死、湯川はそのカラクリを看破する。同時に警視庁・岸谷刑事の捜査から、二つの殺人事件が旅館の娘・成美に累が及ばないように巧妙に仕組まれているという仮説を立てる。ただその過程で、ペットボトルロケットの実験で湯川の“子供嫌い”を克服していく姿など、本筋とはあまり関係ないエピソードが延々挿入される。他にも感情表現がくどく説明も過剰、もっと省略の美学を見せてほしかった。。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

殺人の動機は決して己の利益を図るものではないからこそ、虚偽の自白に捜査はミスリードされ、難航する。それでも湯川は事件の全貌を詳らかにするが、あくまで湯川の推理として処理される。成美は救われたのか、元刑事殺しに図らずも加担した小学生の恭平は傷つかないのか。沈黙が周りの大人の思いを受け止めることであるとわかっていても、成美には重荷だったはず。恭平もまた良心の呵責を感じ続けるだろう。彼らの人生もまた親世代の十字架を背負い続けるのだ。やはり、真実だけが人を自由にすることをこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★*

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