31年目の夫婦げんか HOPE SPRINGS
監督 デイヴィッド・フランケル
出演 メリル・ストリープ/トミー・リー・ジョーンズ/スティーヴ・カレル
ナンバー 158
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
妻が勇気を出して夫のベッドに入ろうとするプロローグが、夫婦の間にできてしまった深刻な溝を象徴する。嫌いになったわけじゃない、愛が冷めただけ。寝室は別、もはや夫婦げんかをする情熱もなく、ただ同じような日常が繰り返される。結婚31年、気持ちのスレ違いを正そうとする夫婦がカウンセリングを受けるうちに出会ったころのときめきを取り戻していく過程は、思わず共感するディテールに満ちている。別れるほどの原因も動機もないが、このままでは壊れていくという危機感がリアルに再現されていた。
長期にわたりセックスレスになってしまったアーノルドとの結婚生活を見直すために、妻のケイは高額のカウンセリングを申し込む。カウンセラーのバーナードはまずお互いに触れあうことを課題に出すがアルバートはくだらないと一蹴する。
カネに細かいアーノルドは、元々カウンセリングにケイが大金を払ったのが気に食わない。バーナードを頭から否定し、ズケズケと文句を言う。それに対してバーナードは“想定内”とばかりに表情を変えず次々と質問、アーノルドもケイも答えていくうちに本音を口にするようになる。心の中でわだかまっていた思いをすべて吐き出させる。それこそが夫婦関係を修復する一番の早道なのだ。旅先のホテルでもソファで寝てケイに見向きもしなかったアーノルドが、ケイのベッドに入り、タッチが添い寝になり、やがて最高のセックスを思い出す。そうしてやっとふたりは相手にに何をすべきだったかに気づいていく。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
最近の日本の週刊誌では、“60歳からのセックス”とか“死ぬまでセックス”といった企画が売れ筋になっている。一方でセックス先進国のはずの米国といっても、アーノルドとケイが住む地方都市ではまだまだ人々は保守的なのだろう。浮気にも不倫にも縁がないまま年を取ったこの夫婦は平均的なのか。愛情以上に、子育てが終わった世代の夫婦間のセックスの在り方について深く考えさせられる作品だった。
オススメ度 ★★★