こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

終戦のエンペラー

otello2013-07-12

終戦のエンペラー Emperor

監督 ピーター・ウェーバー
出演 マシュー・フォックス/トミー・リー・ジョーンズ/初音映莉子/西田敏行/桃井かおり/中村雅俊
ナンバー 169
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

国家の頂点に立ち、“現人神”とあがめられているのに、権限はほとんど行使できない。果たして彼は戦争責任者なのか、それとも軍部の傀儡だったのか。そして日本人の精神に根付いた忠誠心と思想とは。映画は焦土と化した日本を統治・再建するために来日した米国軍人が日本人のメンタリティに戸惑う姿を描く。“yes”“no”をはっきりさせず大切なことは核心をあいまいにする。そんな態度が彼らにはきわめて不可解、それらの考え方を理解しようとする主人公の視点を通して、21世紀の我々にもわかりやすい当時の「日本人論」となっている。

マッカーサー元帥の命令で天皇の戦争責任について調査するフェラーズ准将は、天皇の元側近たちの口の堅さに苦労する。天皇を戦犯にすると暴動が起きかねない状況の中、苦心して証言を集めるうちに、フェラーズの脳裏にも天皇の人となりが浮かび上がってくる。

米国人にとって特に納得できないのが“自決”。すべての責任をひとりで負い真実に蓋をする。日本では立派な死に方と評価されるが、米国人にとっては命を粗末にしているとしか思えない。やがて日本人が死を賭してでも守ろうとする天皇に対し、フェラーズは畏敬の念を抱き始める。天皇とはいったい何者なのか、なぜ日本人の心にかくも深き影響を与えているのか。戦争に胸を痛める平和主義者との実像が結ばれるにつれ、フェラーズは天皇有罪論に反発していく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

結局、“戦争を起こした責任は誰にあるのかわからないが、終わらせたのは天皇”という結論に落ち着き、マッカーサー天皇に面会を求める。そこでも天皇は感情を露わにせず、国民の安寧をマッカーサーに願うばかり。その振る舞いは、マッカーサー相手にどうすべきか迷う様子にも見えるが、見苦しい言い訳はしない潔さにも見え、また一切の責任を取る覚悟にも見える。言論の自由が奪われていたあの時代に、天皇もまた自由な発言を封じられていた皮肉。人間宣言をいちばん喜んだのは、天皇自身ではなかっただろうか。。。

オススメ度 ★★★

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