こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ペーパーボーイ 真夏の引力 

otello2013-07-30

ペーパーボーイ 真夏の引力 THE PAPERBOY

監督 リー・ダニエルズ
出演 ザック・エフロン/ニコール・キッドマン/マシュー・マコノヒー/ジョーン・キューザック/メイシー・グレイ/デイヴィッド・オイェロウォ/スコット・グレン/ニーラ・ゴードン
ナンバー 184
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

豊かな金髪、短いスカートから伸びるすらりとした脚、ぼってりとした唇、挑むような視線。魔性の女と呼ぶには安っぽすぎる全身から立ち上るセックスの匂い、まるで男を挑発するために生まれてきた“ビッチ”な女をニコール・キッドマンが怪演、この罪深くいかがわししい映画に花を添えつつ毒を盛る。1969年、黒人に対する差別がまだ根強い米国南部、無為に時を過ごしていた青年は彼女の磁力に引きつけられ、恋に落ち、やがて世の中の美しくないものを目にして傷ついていく。たとえ家族でも、誰もが抱える秘密と嘘、それを知ってしまうのは大人への通過儀礼。ひと夏の過酷な体験を通じ主人公が大人へと成長する過程は、あまりにも息苦しく残酷だ。

小さな町で暮らすジャックは、新聞記者の兄・ウォードがヒラリー死刑囚の冤罪を晴らす調査の手伝いに駆り出される。そこに、ヒラリーと文通のみで婚約したという謎の女・シャーロットが現れ、ジャックは彼女に心を奪われる。

刑務所での面会中、仕種と言葉でヒラリーをイカしてしまうシャーロット。やっぱり人を殺していそうな粗暴さを秘めたヒラリー。沼地に住むワニの解体業者の胡散臭さ。ジャーナリズムが世界を変える力を持つと信じているウォードにも隠れた性癖がある。それまで無縁だった類の人々はジャックの短い人生経験では理解不能、混乱の中でシャーロットへの思いばかりが膨らんでいく。そんな、ジャックの中で上昇を続ける不快指数を、古いフィルムに焼きこまれたような暑苦しい映像がリアルに再現する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で彼らの本来の役割である冤罪の真実を掘り起こす作業は一応実を結び、ヒラリーは釈放される。ただ、調査を通じて人間の本性に迫る試みは成功しているが、その分ミステリーの楽しみは半減。そして張り巡らされた伏線が回収されずにあいまいな部分を残したまま、更なる悲劇が引き起こされる。事の顛末を最後まで目撃したジャック同様、どう受け止めてよいかわからないもどかしさが胸につかえる作品だった。

オススメ度 ★★*

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