こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウォーム・ボディーズ 

otello2013-08-09

ウォーム・ボディーズ WARM BODIES

監督 ジョナサン・レヴィン
出演 ニコラス・ホルト/テリーサ・パーマー/ロブ・コードリー/デイヴ・フランコ/アナリー・ティプトン/ジョン・マルコヴィッチ
ナンバー 183
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

薄れゆく記憶の中に少しだけ存在する意識は、死んだはずなのに生き続ける青年にとって苦悩の源。まだ人間の部分は残っている、でも空腹に耐えきれず人間に噛みついてしまう、かといってまったく理性を失ったガイコツにはなりたくない。そんなアイデンティティクライシスに陥ったゾンビ像が新鮮だ。物語は食料調達に出たゾンビが人間の少女に一目ぼれしたのをきっかけに起きる冒険を描く。決して恋に落ちてはいけない相手、しかしその思いは抑えきれない。映画は、人を愛する気持ちがハートに血を通わせ、生きる動機になり喜びを生むと訴える。

ゾンビとして無為に時間を過ごすRは、医薬品調達に来た人間の一団を襲ったときに、そこにいたジュリーに心を奪われる。ジュリーが他のゾンビに見つからないよう匿いつつ彼女の歓心を買おうとするうちに、Rの体に変化が現れる。

人間はもちろんゾンビを警戒している。それ以上にゾンビたちも人間に“殺されない”ように集団行動を取る。ここではゾンビも“死”を恐れているという矛盾が、ユーモアを感じさせつつも、ゾンビでいる辛さを象徴する。Rにとってジュリーは無間地獄から救ってくれる希望に見えたのだろう、ジュリーの恋人の脳を食べて彼らの思い出を吸収し、その願いを確信に変えていく。一方のジュリーも、Rが彼女を食うつもりがないと知って敵意を解く。争っているばかりでは悲劇が繰り返されるばかり、お互い理解しあえば新たな関係が構築できると、ふたりは身をもって証明しようとする。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ジュリーを人間の居住地域に戻してやったRがバルコニーの下から彼女に話しかけるなど、時にシェークスピアの悲劇を髣髴させる。だが、Rはロメオのように恋人を待たせたりはしない、ジュリーもジュリエットのように恋人を先に逝かせたりはせず、父を説得し共にガイコツ軍団と戦おうとする。ふたりは、自分たちが生きてこの世界で結ばれてこそ、人生に価値が芽生えるとわかっている。まず信じてみる、そうすれば不寛容の壁を壊すことができるのだ。。。

オススメ度 ★★★

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