こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

otello2013-08-17

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

監督 長井龍雪
出演
ナンバー 196
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

いつも一緒だった友人の死。原因が己にあると思い込み、悩み傷つき、まだ高校生の年頃なのに老成してしまった少年少女たちは、いまだに呪縛から逃れられない。もちろん幽霊だからといって恐れるわけではなく、彼女を仲間として迎える。物語は小学校の仲良し男女6人組の女子メンバー1人が事故死したのをきっかけに、残った者が葛藤を抱えながら生きていく姿を描く。十代の若さで過去に捕らわれ、苦悩し、他人の気持ちばかり考えてしまう彼らの優しさが痛々しい。

超平和バスターズ”元リーダー・じんたんの前に、5年前亡くなっためんまが現れる。めんまはじんたんにしか見えないが、メンバーはめんまの存在を信じ、めんまが何をしたくてこの世に戻ってきたのかを探る。

小学生の時のように無邪気に戯れてはいられない。進路はそれぞれ、みな別の人生を歩き始め、価値観も違ってきている。しかし、めんまと最後に交わした言葉だけは鮮烈に共有している。あの日、僕たちは何を伝えたかったのだろう、私たちは何を望んでいたのだろう。届かなかった思いと叶わなかった願い。再び秘密基地に集まった5人はめんまが成仏できるように頭をひねり、その過程で現在のわが身を見つめ直す。秩父の町や森、建物などをディテールまでリアルに再現つつもノスタルジーを感じさせるタッチの絵が共感を呼び、心を温かくする。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

“好き”と口には出せなくても素直に態度に出ていた小学校時代とは違い、今は感情を巧みにオブラートに包むすべを心得ている。隠し事はナシというルールは生きていても、隠さないと相手を傷つけることを知っている。それでもやっぱり、自分と真剣に向き合ってくれた、自分を仲間と認めてくれた、そんな親友たちにきちんと感謝したい。人と人のつながりや信頼は言葉によって生まれ培われる、言葉の持つ力をあらためて教えられた作品だった。

オススメ度 ★★*

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