こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

恋するリベラーチェ

otello2013-09-20

恋するリベラーチェ BEHIND THE CANDELABRA

監督 スティーヴン・ソダーバーグ
出演 マイケル・ダグラス/マット・デイモン/ダン・エイクロイド/ロブ・ロウ/デビー・レイノルズ
ナンバー 227
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

超絶技巧で客席を驚嘆させ軽妙なトークで盛り上げる、ゴージャスな衣装をまとったピアニスト。ステージでは稀代のエンタテイナーである彼も、私生活では若い男をはべらせながらも忍び寄る老いの恐怖に脅える弱さをさらけ出す。映画は、かつて米国のショービジネス界に君臨したミュージシャンの素顔を、彼と濃密な時間を共有した青年の目を通して描く。メイクと整形で若々しいルックスを保つ一方で衰えた肉体と頭髪を隠し、ゲイ疑惑を徹底して否定するなど、スターのイメージを守り通そうとする主人公の赤裸々な姿をマイケル・ダグラスが怪演、思わぬ変貌ぶりに目が点になった。

友人に誘われてリベラーチェのショーを見に行ったスコットは、楽屋で彼に紹介される。後日、犬の目薬を口実にリベラーチェの豪邸に招待されたスコットは、一夜をベッドで共にしたあと、住み込みの“恋人”となる。

スコットは高級服に高級車、宝石・貴金属を買い与えられ、リベラーチェのステージに上がるなど、今までに経験したことがないめくるめく世界を堪能する。だが、ほどなく太ってしまい、リベラーチェの整形手術と同時にダイエットピルを飲み始める。薬物依存で情緒不安定のスコットと彼を拘束するリベラーチェ、付き合い出したころの甘いときめきが日常となるうちに倦怠期を迎えるという男女の恋人同士でもありがちなパターンを、60歳近いオッサンと親子ほど年の差がある青年のカップルが踏襲する。恋愛感情のもつれる原因は年齢も性別も性的嗜好も関係ない、延々と続く痴話げんかに、2人の人間臭さが凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、スコットは新たな“恋人”の出現でリベラーチェに捨てられる。文字通り飽きたらポイ、養子にする約束もあっさり反故にされ、また普通の暮らしに戻る。それでも、いまわの際のリベラーチェに「あのころがいちばん楽しかった」と告白され、スコットは救われる。おそらくCG処理されているだろうが、骸骨のように痩せたリベラーチェに最期の命を吹き込んでいるマイケル・ダグラスの、俳優としてのチャレンジ精神には脱帽した。

オススメ度 ★★★*