こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コールド・ウォー 香港警察 二つの正義

otello2013-09-28

コールド・ウォー 香港警察 二つの正義 寒戦

監督 リョン・ロクマン/サニー・ルク
出演 レオン・カーファイ/アーロン・クォック/エディ・ポン/チャーリー・ヤン/アンディ・ラウ
ナンバー 233
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

爆弾テロと同時に起きた警官誘拐事件。鉄壁のセキュリティと通信・監視網がいとも簡単に破られ、身代金が要求される。緊急事態に陥った香港、警察内部では主導権をめぐってたたき上げの現場部門とオフィスワークの管理部門が対立する。そこに見え隠れする裏切り者と密告者の影、犯人はテロリストのみならず警察官にもいる。誰が正しくて誰が黒幕なのか、そして本当の敵は誰なのか、映画は一瞬の気の緩みも許さないテンションで疾走する。さらに、内務調査機関の介入で、事件は一層複雑な様相を見せる。一つの謎を解決しても、二の矢・三の矢と繰り出される予想外の展開にスクリーンから目が離せない。

5人の警官が車両ごと消え、その中に息子がいると知った「行動班」のリーダー・リーは、非常事態宣言を出し対決姿勢を取るが救出作戦に失敗する。代わって「管理班」のラウが指揮を執るが、彼もまたまんまと身代金を奪われてしまう。

警察の人事・命令系統をすべて把握し、2人の副長官がせめぎ合う長官不在の時期を狙って犯行に及ぶテロリストたち。特にラウを散々振り回したあげくカネを強奪するユニークなアイデアには思わず膝を打った。しかも、お互いを解任し合うほど仲の悪いリーとラウの出世争いを利用するなど、犯人側の手口は洗練されている。その上で、彼らを疑う内務調査官・ビリーの登場が、物語をアクションからミステリーに鮮やかに変貌させる。この練り込まれた脚本は警察映画の新境地と言っても過言ではない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

確かにリーにもラウにも陰謀を企てる動機はある。人員を動員する権限と情報を握り証拠をもみ消せる地位にある人間が悪事を企んだ時の恐ろしさを知るビリーは、2人を拘束し、尋問する。並行してテロリストが仕掛けた罠に気づくビリー。リーとラウとビリー、3人の男のプライドと人生をかけ戦いは、意外な男の存在でまたしても予期せぬ結末になだれ込む。観客を楽しませるだけでなく深く考えさせる、香港映画のサービス精神が満載の作品だった。

オススメ度 ★★★★

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