こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マダム・マーマレードの異常な謎 出題編

otello2013-10-03

マダム・マーマレードの異常な謎 出題編

監督 中村義洋/鶴田法男/上田大樹
出演 川口春奈/高畑淳子/山崎一/池田成志/オクイシュージ/井口恭子
ナンバー 229
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

映画の中で提示された謎を、与えられたヒントを元に観客が上映時間内に解く。しかも3分間の“シンキングタイム”を3度挟む思いがけない展開は、“史上初”らしい。映画は、30年前に死んだ高名な映画監督の未公開フィルムに残された「遺言」の解明を依頼された“謎解き屋”と共にそのフィルムを見る設定の下、趣向を凝らした3本の短編を楽しめる構成になっている。芝居がかったヒロインを始め胡散臭そうな登場人物がそろった現在のパートに比べ、劇中劇は時代を感じさせる古風な作風。そんな手の込んだ作りに、遊園地のミステリーツアーに参加しているような高揚感を覚える。

“解けない謎はない”と豪語するマダム・マーマレードは古い豪邸に招待され、世界的名声を得ていた藤堂監督の遺族から彼の遺書の真意を探り出してくれと頼まれる。手がかりは「最初のセリフ」、少女の淡い初恋を綴った作品から、奇妙な愛に満ちたホラー、そして人情ものが上映される。

1本目の「つむじ風」は、好きになってはいけない人に恋をした少女が、デビュー当時の吉永小百合を連想させるきらめきで繊細な心を表現している。まだ電話すらあまり普及していなかった1965年、気持ちは直接口にするか手紙でしか伝えられないもどかしさが初々しい。2本目の「鏡」は、鏡の中に閉じ込められた女に強く惹かれた男が、彼女を救い出そうとするうちに邪悪な怨念に呪われていく。まあ、今の水準で考えれば特に新鮮味はないが、作られた当時は斬新だったということなのだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

で、それぞれの作品の中に藤堂からのメッセージが隠されているわけだが、短編終了後3分間の“シンキングタイム”では、結局解答が浮かばなかった。それでも、3本目の、頭の弱い少女の母への思いを描いた「やまわろわ」は、これだけ独立させても通用するほどの情愛にあふれた作品で、言葉でうまく考えを説明できない少女の一途な感情が胸を打った。

オススメ度 ★★★

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