こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パッション

otello2013-10-07

パッション PASSION

監督 ブライアン・デ・パルマ
出演 レイチェル・マクアダムス/ノオミ・ラパス/ カロリーネ・ヘルフルト/ポール・アンダーソン
ナンバー 246
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

親切な上司を信頼してはいけない、忠実な部下に心を許してはいけない、二股男を愛してはいけない。完全実力主義の会社、そこでは誰もが強烈な上昇志向で少ないポストを争い、結果を出した者だけが生き残り昇進していく。物語はそんな広告代理店に勤務する女たちの熾烈な競争の陰で繰り広げられる、裏切りと嫉妬、欲望と罠のパワーゲームを描く。クローズアップの多用と感情を刺激する音楽、そして丁寧なカメラワークで撮影された登場人物の心理描写は古き良きミステリー映画を見ているよう。それぞれのシーンをじっくりと見せる、ゆったりしたテンポが逆に新鮮だった。

スマホ新製品のCMデモテープを作製、社内で好評を博したイザベルは、手柄を上司のクリスティーンに横取りされる。だがイザベルはビデオを投稿サイトで公開、すると大反響を得て社長に絶賛される。

その日からクリスティーンの露骨な嫌がらせが始まり、イザベルは精神的に追い詰められていく。部下のダニが味方になってくれたお陰で何とか打開策を出すが、起死回生とまではいかない。どんな時も魅力的な微笑みを絶やさないクリスティーンに、容姿に恵まれないイザベルは歯が立たない。このあたり、もはや学校での“いじめ”のレベルといえるほど執拗で陰湿、女同士の怨念と悪意の衝突はすさまじいまでの緊張感を生んでいく。その過程で、デ・パルマ監督は情報を詰め込んで考える時間を与えない昨今の流行とは一線を隠し、腰を落ち着けてじっくりと彼女たちの胸の内を再現する。サスペンスの王道を行く演出だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてクリスティーンが殺され、イザベルが容疑者として逮捕される。一度は犯行を自白するが、ドラッグのせいで意識が正常に保てなかったと後に否認する。そのあたりから幻覚と現実、狂気と殺意、更なる愛憎と復讐が入り乱れ、真実と虚構のはざまを行き来する。腹に一物持つ者は、常に監視され記録されているリスクを考慮しておくべきと、この作品は教えてくれる。で、クリスティーンが“予言”したとおり、死んだのは姉だったのか。。。

オススメ度 ★★★*

↓公式サイト↓