こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マイ・マザー

otello2013-10-09

マイ・マザー J'ai tue ma mere

監督 グザヴィエ・ドラン
出演 グザヴィエ・ドラン
ナンバー 244
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

食べ方から話す内容、着る服、運転の仕方までが気に食わない。幼いころはあんなに好きだったのに、高校生になった今では、死んでもらいたいくらいウザい存在になってしまった母。そんな彼女といると、口を開けば罵詈雑言の数々が出る。映画は、少年の母親に対する憎しみにも似た怒りを鋭いナイフで切りつけるように描く。子ども扱いする、自由を認めてくれない、会話がくだらない、もう体格で母はを超えた、だから知識や人間性でも母を超えたと勘違いしているティーンエージャーの、母親への残酷な言葉の仕打ち。そこに込められた、まだ何物でもない自信のなさをカムフラージュする少年の苛立ちは、誰もが経験する大人への通過儀礼だ。しかし、母の心情を思いやろうとしない彼は、やはりまだ成熟とは程遠い。

母子家庭のユベールは、母と顔を合わせるとケンカばかりしている。一人暮らしの許可をもらうために家事を手伝ったりもするが、長くは続かず、ボーイフレンドの部屋で過ごす時間も多い。ある日、母にゲイであるのがばれ、寄宿制の高校に転入させられる。

どんな憎まれ口にも耐えてきた母も、時々キレてしまい、ユベールを追い払ったりする。それでもわが子を心底憎むことはできず、また元の生活に戻っている。ところが、彼女も孫の顔が見られないと悟った時に、我慢の限界が来てしまう。このあたりからユベールではなく、母の辛さに共感してしまった。もちろん思春期特有の気持ちは理解できる、だが、あそこまで母に対して敵意をむき出しにするのは、いかに繊細で傷つきやすいと装っていても、単に甘ったれているだけのバカ息子にしか見えない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で、ユベールが少しでも優しさを見せるとすべてを許してしまうのも母。やはり我が子にどれほど冷たくされても完全に吹っ切れず、育て方が悪かったのかとユベールを責める前に自分を省みてしまう。学校から失踪したと知らせが入った時に、思わず電話口で怒鳴ってしまう母の姿に、ユベールへの深い思いが象徴されていた。そして母との思い出に託されたユベールの本心。そう、これは母と子の愛の映画だったのだ。

オススメ度 ★★★*

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