こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゼロ・グラビティ

otello2013-10-19

ゼロ・グラビティ GRAVITY

監督 アルフォンソ・キュアロン
出演 サンドラ・ブロック/ジョージ・クルーニー
ナンバー 254
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

雲の切れ目から見える紺碧の大洋、大陸の海岸線は地図のようにくっきりと浮かび上がり、星たちは手が届きそうなほど近い。地上600キロ上空からの風景は人智を超越した意志の存在を信じさせる説得力がある。一見調和のとれた世界、だが一歩間違えれば待ち受けるのは死。物語は突発事故で母船を失った乗組員のサバイバルを描く。光と影のコントラストに満ちた宇宙の研ぎ澄まされた美しさ、体のすぐそばをかすめる高速の飛来物、無重力との戦い、人工衛星の外観から内部に至るディテール、時折訪れる静寂、それらヒロインを取り巻く状況と彼女の感覚を観客にも同時に体験させるヴィジュアルが圧倒的な臨場感で、もはや映像表現の極みに達したと言って過言ではない。絶対に3Dで鑑賞すべき映画だ。

爆破された人工衛星の破片が飛散してスペースシャトルを破壊してしまう。船外活動中だったエンジニアのライアンとベテラン飛行士のマットは、互いの体を命綱でつなぎ、近くを周回する国際宇宙ステーションを目指す。

地上との通信も途絶え、頼れるのはマットの経験と機転のみ。不安定な空間ゆえ少しの力でバランスを失い、酸素不足も重なって平常心を失うライアン。一方で生還するためのあらゆる可能性をライアンに示唆するマット。普段はジョークばかり飛ばしているが極限状態に陥っても冷静さを保つマットの精神力は、まさに“ライト・スタッフ”と呼ぶべき資質。ライアンをリードしつつ、“あきらめることも必要”と最良の判断を下す姿は、彼の魂が崇高で気高い宇宙の一部であると感じさせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて国際宇宙ステーションに到着したマットとライアンだが、そこでも難題に見舞われる。絶望的なシチュエーションでライアンは甘美な死の誘惑に負けそうになるが、生きようとする思いが残っている限りチャレンジしろと“マット”に励まされる。奇跡は、奇跡を呼び込もうと努力する者にしか訪れない。そんな、生きる力の素晴らしさと大切さを教えてくれる作品だった。それにしても消火器にあんな使い方があったとは。。。

オススメ度 ★★★★*

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