こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アルカナ

otello2013-10-21

アルカナ

監督 山口義高
出演 土屋太鳳/中河内雅貴/Kaito/植原卓也/谷口一/谷口賢志/野口雅弘/蜷川みほ/山口祥行/谷村美月/岸谷五朗
ナンバー 191
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

心霊現象なのかまったく新しい怪奇現象なのか、臨死体験した人間は自らの分身を体から分離させ、分身は独立した人格として活動する。生気のない顔ながら卓越した身体能力で人間を襲い、その心臓を糧として闇の世界で生きている分身。映画はそんな彼らが起こした惨殺事件を追う刑事が記憶喪失の少女とかかわるうちに、霊が見える能力で覚える疎外感を共有し、お互いに理解を深めていく過程を描く。スタイリッシュな映像を短いカットにして積み重ねるシーンの数々はスピーディに畳み掛けてくるが、いかんせんストーリーが整理されておらず散漫な印象を受ける。

死者の霊が見えることに苦しんでいた刑事の村上は、大量殺人事件の現場で逮捕された少女も同じ悩みを持つと知り、彼女に接近する。自分の名前も覚えておらずただ霊を成仏させるだけの彼女に、村上はマキと名付け、殺人犯と決めつける同僚から守ろうとする。

一方、警視庁の心霊事件専門班が、惨殺事件は分身の仕業と断定、村上の捜査に介入してくる。同時に、マキとそっくりのさつきが現れ、マキの正体が明らかになっていく。普通は分身になるとゾンビのような邪悪な面を見せるのに、彼女たちの場合、さつきが親不孝者なのに対しマキは気立てがよくおとなしい。分身のほうがより愛される存在という皮肉が、本体と分身の価値の差に疑問を投げかける。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

しかし映画はそれらの要素を取り留めなく羅列しているのみで、物語としてのまとまりがほとんどない。さらに子供を狙った爆弾犯など本筋とは無関係な登場人物を絡ませるために収拾がつかなくなってしまう。せめてマキが己のアイデンティティクライシスに苦悩するなどのエピソードがあれば、考えさせられたのだが。村上が爆弾犯を追うアクションの疾走感や、最強分身・ミチルとの格闘場面の躍動感は洗練されていただけに、もう少しきちんとした構成の脚本を作ってほしかった。

オススメ度 ★★

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