こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

清須会議

otello2013-11-13

清須会議

監督 三谷幸喜
出演 役所広司/大泉洋/小日向文世/佐藤浩市/鈴木京香
ナンバー 275
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

万端の準備を整えて合戦に臨む。それは鉄砲や刀で殺し合うのではなく、知略と言葉を武器により多くの支持を集めたほうが勝つ、血とは無縁の戦。物語は、謀反で主君を失った重臣たちが虚々実々の駆け引きを繰り広げながら、己が推挙する候補者を後継に据えようと画策する様子を描く。当主にふさわしい男子に恵まれなかった深刻な人材難、そこに付け込んで主家を踏み台にしようとする者、忠義を尽くそうとする者、情に流されず冷静な判断をする者、勝ち馬に乗ろうと日和見を決め込む者。欲望と裏切りが渦巻き、嫉妬と憎悪に評定は風雲急を告げる。しかし映画はそれら負の感情を封印して、あくまでコミカルに天下の行く末を見守る。

本能寺の変の後、織田家の跡目を誰にするかを決めるため、清須城に集った柴田勝家丹羽長秀羽柴秀吉の3宿老。柴田と秀吉が対立、遅参の滝川一益に代って池田恒興を加えた4人で会議を始めるが、意見はまとまらない。

柴田が推す信長の三男も、秀吉が擁立する二男も明らかな器量不足、そこで秀吉は信長直系の孫・三法師を担ぎ出す秘策を思いつく。何事も愚直で胸の内がすぐに顔に出る柴田に対し、常に三歩も四歩も先を読み相手の退路を断って自分に有利に事を運ぶ秀吉との力量の差は歴然。また、熟考型の丹羽や利に聡い池田など、これまでの時代小説で確立されて人物像をデフォルメする。彼らが話すテンポの速い現代語が映像にスピード感を与えていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

多数派工作に敗れ、お市の方に唆された柴田は刺客を放つが、危険を察した秀吉はあえて柴田に匿ってもらう。狡猾・冷徹になりきれない柴田の心理を逆手に取る秀吉は、さらに城を去る柴田を土下座して見送るなど、人心を掌握し操る才に長けたところを見せる。そのあたりも、史実の縛りの中でできる限り喜劇として楽しめるように工夫が凝らしてはいる。だが、三谷作品というだけで斬新な発想を期待してしまう身には、物足りなさも禁じ得なかった。。。

オススメ度 ★★*

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