こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ソウルガールズ

otello2013-11-14

ソウルガールズ SAPPHIRES

監督 ウェイン・ブレア
出演 クリス・オダウド/デボラ・メイルマン/ジェシカ・マーボイ/シャリ・セベンズ/ミランダ・タプセル
ナンバー 265
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

原住民・アボリジニが2級市民の扱いを受けていた時代のオーストラリアで、 “ソウル”を歌い上げた4人の女声コーラス。偏見に憤りながらも理解者に恵まれ、ベトナムで銃を取る米兵のために激戦地を駆け巡る。初めて見聞する物質と欲望にあふれた大都会、すぐそばの戦場では毎日多くの兵士が傷つき命を落としていく。悲惨だが活気あふれる状況でスターを夢見て精一杯声を張り上げる彼女たちは、一方で、米国で吹き始めた自由の風を目の当たりにして自分たちの権利意識にも目覚めていく。物語は歌好きな3姉妹プラスいとこがエンタテインメントの世界で成功していく過程を描く。オーストラリアのアボリジニ復権は、キング牧師モハメド・アリといった米国の黒人公民権運動なしではなしえなかった事実が興味深い。

ゲイル、シンシア、ジュリーの3人はコンテストに出場、圧倒的な歌唱力を見せるが、露骨な判定で落選。伴奏者のデイブに頼んでベトナム慰問団のオーディションに挑戦する。いとこのケイを加え4人で臨み、サイゴン行きの切符を手に入れる。

アボリジニの子供を隔離する政策で、肌色の薄かったケイは白人家庭で白人として育てられている。だが、一度は断ってもやはりステージに立ちたい気持ちと体内に流れる血には嘘をつけず、彼女はサイゴンに同行する。前線から遠いサイゴンは比較的安全な上に、差別されたりもしもない。むしろ米兵とのアバンチュールを積極的に楽しむなど、彼女たちは開放的な空気を満喫している。そんな中、いちいちデイブに突っかかるゲイルの思わぬ感情が露わになっていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

長女でリーダー格だったゲイルより、末っ子のジュリーのほうがはるかに声量は豊か。マネージャーであるデイブがジュリーをメインボーカルに据えたのを根に持っているのだろう。彼女にまとめ役を期待していたデイブは悩まされるが、やがてゲイルの態度が恋の裏返しと知った時、デイブもまた彼女に心を奪われていることに気づく。そのあたりの男女の繊細な機微も微笑ましかった。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓