こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マラヴィータ

otello2013-11-18

マラヴィータ MALAVITA

監督 リュック・ベッソン
出演 ロバート・デ・ニーロ/ミシェル・ファイファー/トミー・リー・ジョーンズ/ディアナ・アグロン/ジョン・ディレオ
ナンバー 279
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

決して自分たちの流儀を変えない傲慢な態度。自己主張が強く、カネの稼ぎ方に聡く、利害関係を敏感に見抜いて周囲をコントロールしようとする姿は、世界各国に進出した米国人の典型だ。当然彼らと接するフランス人は、行動力に唖然とし豊かな物質文明に憧れてはいるが、やはりどこかで米国人を見下している。物語は仲間を裏切った元マフィアのボスと家族が、逃亡先で様々なトラブルに巻き込まれつつも、知恵と度胸、アイデアとユーモアで解決していく過程を描く。短気だが文才のある父、良妻なのに放火癖のある母、腕っ節が強いが純情な娘、駆け引きに長けた息子。曲者一家のユニークなキャラクターが楽しい。

FBIの保護プログラムで隠遁生活を送るフレッドは妻子を連れノルマンディーに新居を定める。だが、妻のマギーは早速住民の陰口に耐えきれずスーパーを爆破、フレッドも気に食わない配管工を半殺しにする。

長女のベルは数学教師と恋に落ち、長男のウォレンは策を弄して裏番長にのし上がる。それらフレッドの子供たちの学園生活は、言葉の違う不慣れな異国でのサバイバルをテンポよくとらえて小気味よい。ところが、時折見せるフレッドの残酷で暴力的な一面は、コミカルなタッチのこの作品に馴染んでおらず、強烈な違和感を放っている。あえてミスマッチを狙ったのかもしれないが、その効果は目的を果たしているとは言い難い。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ウォレンの英語ジョークが掲載された学校新聞が海を渡って巡り巡ってフレッドの命を狙うボスの目に触れるシークエンスなど、運命の不思議を思わせる洗練されたテクニックをみせる。しかし、実際に殺し屋たちがフレッドの住む町にやってきて、警察署や消防署を襲い、さらにフレッドの一家を手にかけようとすると、映画は工夫に乏しい銃撃と格闘に終始するのみ。マギーのガスボンベ利用法やベルのテニスラケット、ウォレンの人をたぶらかす話術など、前半の伏線を殺し屋たちとの戦いに生かしてほしかった。

オススメ度 ★★

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