こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

いとしきエブリデイ

otello2013-11-20

いとしきエブリデイ EVERYDAY

監督 マイケル・ウィンターボトム
出演 シャーリー・ヘンダーソン/ジョン・シム/ショーン・カーク/ロバート・カーク/ステファニー・カーク
ナンバー 280
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

面会が終わり自房に戻った男はベッドに横たわり大きなため息をつく。妻の元気な笑顔と子供たちの成長を胸に焼き付け、次に会えるまでの時間の長さに思わず滅入ってしまうのだ。物語は、刑務所の男と、彼の帰りを待つ妻・4人の子供の数年間に及ぶ交流を通じ、愛する者がいる希望と愛されている実感がいかに人を支えているかを描く。そして、もう二度と離れて暮らしたくない、妻子につらい思いをさせたくないという気持ちを持たせることで、前科者の再犯を防ごうとする英国の先進性を説く。規律で縛り思考を放棄させる日本とは違い、考える自由を与える矯正システムが厚く人権に配慮している点に驚いた。

服役中のイアンは妻のカレンと子供たちの来訪が唯一の楽しみ。数カ月に一度、カレンと抱擁を交わし、顔を見るたびに背が伸びる子供たちに目を細めながらも刑期を終えるのを待ちわびる。カレンもまた昼夜働き、イアンのいない家庭を守っている。

幼かった子供たちも小学校に上がると、なぜ父親が不在なのか、友人の家と違うのかに気づいていく。戸惑い、周囲の大人の態度に違和感を覚え、父は罰を受けていると知る。あんなに愛してくれる父が“悪事を働いた人”のレッテルを貼られている事実に、哀しみ落胆し、どうしようもなく湧き上がる感情のうねりをじっとかみしめる長男の視線が痛々しく切ない。一方でイアンは薬物に手を出したり、淋しさに耐えかねたカレンは言い寄ってくる男に気を許してしまったりもする。そのあたり人間の弱さをさらけ出し、愛する努力なしに家族の絆は維持できないと訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、一時出所や一時帰宅が認められるようになったイアンは、むさぼるようにカレンと求め合い、子供たちを慈しむ。ともに食卓を囲み、公園でまったりと過ごす。ただそれだけ、そんな当たり前の日常こそが人生を豊かにしてくれると、一家6人がそろってビーチで戯れる姿が象徴していた。。。

オススメ度 ★★★*

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