こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

すべては君に逢えたから

otello2013-11-25

すべては君に逢えたから

監督 本木克英
出演 玉木宏/高梨臨/木村文乃/東出昌大/本田翼/市川実和子/甲斐恵美利/時任三郎/大塚寧々/山崎竜太郎/小林稔侍/倍賞千恵子
ナンバー 282
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

少しだけ人にやさしくしてあげたい、少しだけ明るい気分になれる特別な一日、クリスマスイブに起きた小さな奇跡が心を温めてくれる。高級レストランでの出会い、東京と仙台の遠距離恋愛、愛する家族との別れ、若き日の大失恋、母の迎えを待つ孤児…。もはやTVドラマで手垢がついたシチュエーションの数々は、ありふれた日常の中で突然起こる非日常が、人生を豊かにしてくれると主張する。あっと驚く仕掛けはない、どんでん返しがあるわけでもない。しかし、そんな陳腐な物語こそが市井の人々にとっての幸せであると映画は訴えているようだ。

売れない役者・玲子は帰郷を決心、最後の贅沢にと入った高級ホテルのバーでIT企業社長・和樹に声をかける。デザイナーの雪奈は恋人の拓実となかなか会えず苛立つ。パティシエの琴子は49年前に駆け落ちに失敗した過去を語り出す。

自分の思いを大切にし、恋にどん欲な女たち。雪奈はしつこいくらいに拓実を束縛し、昼夜を問わずスマホにメッセージを送り続ける。マイペースな拓実は彼女のことが好きでも、あまりに己の気持ちを押し付ける雪奈にうんざりしている。また玲子も、自信満々に振る舞っていても実は孤独な和樹を巧みに操る。おそらく秘書から、和樹の行動パターンを探り網を張っていたはず。偶然を装って近づいてきたという和樹の読みは当たっていたのだ。“女優の夢破れ失意のうちに東京を去る女”を演じた玲子の見事な作戦勝ち、押しては引く玲子の術中に和樹は簡単にはまってしまう。そのあたりの「正統派肉食系女子」と「控えめを装った肉食系女子」の生態がなかなか楽しめる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ琴子の苦い思い出は、新幹線の古い切符で愛の記憶に昇華されるが、取ってつけたような不自然さが気になった。ガンで余命わずかと宣告された東北新幹線の運転士は残った時間を妻子と過ごそうとするが、JR東日本は退職の日まで運転士を乗車させるものなのか。全般的に細部のリアリティが乏しく、この作品の「クリスマスの魔法」も効き目が薄くなるのは否めない。。。

オススメ度 ★★

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