こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キャプテン・フィリップス

otello2013-12-02

キャプテン・フィリップス CAPTAIN PHILLIPS

監督 ポール・グリーングラス
出演 トム・ハンクス/キャサリン・キーナー/ バーカッド・アブディ/バーカッド・アブディラマン/ファイサル・アメッドナジェ
ナンバー 288
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

守るべきは命と約束、海賊に貨物船を乗っ取られた船長は冷静さを失わず、部下の身を案じ、わが身を差し出して事態の解決を図る。銃口を突きつけられる恐怖に耐え、乗組員を殺すという強迫にも屈せず、ハッタリと話し合いで海賊たちと対峙するのだ。映画は、ソマリアの武装した猟師たちの人質となった主人公が、延々と続く膠着状態の中で、強靭な意志で救出を待つ姿を描く。退路を断たれた海賊たちの理性を信じあくまで非暴力を貫くのみならず、傷ついた一味の手当までする彼の行為は、良心を試されているよう。決して華々しい活躍をするわけではない、だが、本当の勇気とは何かを教えてくれる。

小舟で接近してきた武装グループが貨物船に侵入、船橋を占拠し船長のフィリップスを人質にとる。ところが機関室に隠れた乗組員が海賊のリーダー・ムセを捕えフィリップスと交換を要求、海賊はフィリップスを救命艇に乗せて脱出してしまう。

ハンディカメラの映像で緊迫感をもたせるのはポール・グリーングラス監督が得意とする手法だが、今回はスター俳優を起用したためドキュメンタリーのようには見えない。それでも米軍に囲まれ無事帰れる望みを絶たれた海賊の焦りや苛立ち、彼らを落ち着かせようとするフィリップスの不安と希望、そういった感情が救命艇の狭い空間の中で交差し、極限状態のなかで露呈する人間の本性がリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

冒頭、フィリップスは妻との会話で、“自分たちの世代は与えられた仕事をこなしていれば昇進できたが、子供たちはサバイバル社会に直面する”と言う。そして最後に特殊部隊に保護されたフィリップスは慟哭する。それは極度の緊張から解放された安堵だけでなく、安穏とした時代はフィリップスたちの世代で終わり、ムセみたいな若者までが海賊にならなければ生きていけない世界になった21世紀に対する責任が、自身にもあると悟ったからだろう。。。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓