こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オーバードライヴ

otello2013-12-03

オーバードライヴ SNITCH

監督 リック・ローマン・ウォー
出演 ドウェイン・ジョンソン/バリー・ペッパー/ジョン・バーンサル/マイケル・K・ウィリアムズ/ベンジャミン・ブラット/スーザン・サランドン
ナンバー 289
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ほんの軽い気持ちで手を出しただけなのに、深いドロ沼に足を取られてしまった少年。濡れ衣を着せられた彼を救おうと奮闘する父もまた、素人考えから自ら仕掛けた罠にはまっていく。一度始めたら後戻りできない、自分が死ぬか組織を壊滅させるまで終わらない。映画はそんな麻薬犯罪に巻き込まれた男の孤独な戦いを描く。別の犯罪者を密告すれば減刑される米国の司法取引制度を利用する主人公を、マッチョな巨体に暴力を封印したドウェイン・ジョンソンが好演、いかつい風貌と家族を愛する繊細な父親の苦悩というギャップが新鮮だった。

友人のドラッグを受け取って10年の懲役判決を受けた息子のために、ジョンは検事に密売組織の告発を提案、町の売人に接触する。だが、大物ボスにつながる情報を得た捜査官と検事はジョンに更なる任務を与える。

一方で、他カルテルの襲撃を巧みに躱した機転を大物ボスに気に入られたジョンは、直々に密輸を任される。断れば司法当局に見放され組織に殺されるのは確実、ジョンはしぶしぶ応じる。このあたり、運び屋を使い捨てにする組織と、社会正義の実現よりも出世のために密告者を使う捜査官や検事といった人々のキャラクターがリアルに再現される。そして力を持つものに弱みを握られてしまったジョンの、家族のみならず汚れ仕事に引き入れた社員の安全までが脅かされることへの逡巡と葛藤、それらを克服し決着をつけると決意した姿に、戦うべき時を知った男の勇気を感じた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

大型トレーラーに札束を満載しメキシコに向かうジョンは、司法にも組織にも言いなりにならない第3の道を選び実行に移す。その過程は息詰まる駆け引きからトレーラー対普通車の壮絶なカーチェイスに移行するが、ここでもド派手な演出よりも怒りや焦りといったジョンの感情にズームする。何より、司法当局の麻薬組織に対する厳しい対決姿勢が、米国の現実を物語っていた。

オススメ度 ★★*

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