こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

受難

otello2013-12-10

受難

監督 吉田良
出演 岩佐真悠子/淵上泰史/伊藤久美子/古舘寛治/奥浜レイラ
ナンバー 294
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

祝ってくれる友人もなく誕生日を迎える女。当然、男には縁がなく、知人に“セックスしてください”と頼んでもまったく相手にされない。その、健気で一途だが自信のない態度が男に遠慮され、女からも距離を置かれている。そんなヒロインの内面を見透かし、唯一本音で付き合えるのが性器にできた人面瘡。物語は、孤独な女と股間のオッサンの対話を通じて、正直に生きることも時には大切であると訴える。“人の役に立ちたい”と海岸のごみを拾い、レイプ魔を撃退し、密会カップルに部屋を貸しても一向に満たされぬ思いが、“たった1本のチンチンが入っただけ”で劇的に変わっていく。鈍感なのに繊細な彼女の感情を岩佐真悠子が多彩に演じ分けていた。

処女を捨てようと数人の男に声をかけるが誰からもパスされるフランチェス子は、小さな町でひとり暮らしを始める。ある日パンツの中から男の声が聞こえ、股間を鏡に映すと性器がひげ面のオッサンになっていた。彼女はそれを古賀と名付ける。

さらに右手で触れた男をインポにする能力まで身に着けたフランチェス子はますます男=セックスから遠ざかる。彼女を“女として無価値”と罵りつづける古賀と、彼の言葉を反発もせず受け入れるフランチェス子。古賀はフランチェス子の深層心理であり、欠点を分かっていながら直そうとしない彼女を客観視するもう一人の自分なのだ。タートルネックに長いスカート、編み上げブーツの服装のせいで男に敬遠されていると気付かなかった彼女が、初めて男に抱かれた後に裸で走り出す。そこには、もう心の鎧も脱ぎ捨てようという決意が凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、古賀の声やしゃべり方が非常に乱暴で違和感を禁じ得ない上、フランチェス子の人物像も矛盾だらけの不思議ちゃん。なかなか共感できるポイントがみつからない。どうせなら弾けたコメディにするくらいの大胆さがあれば楽しめたはずだ。中途半端なキャラクター設定のために作品世界にはいり込めなかった。。。

オススメ度 ★★

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