こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

楽隊のうさぎ

otello2014-01-09

楽隊のうさぎ

監督 鈴木卓爾
出演 川崎航星/宮崎将/山田真歩/徳井優/井浦新/鈴木砂羽
ナンバー 4
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ダボダボの学生服、新しい友人、初めて足を踏み入れる校舎。今まで経験したことのないものばかりに囲まれ、これからうまくやっていけるのかと戸惑う新入生の不安が繊細に再現される。まだ何をやりたいのかわからない、何ができるのかはもっとわからない、物語はそんな中学1年生が放課後のクラブ活動を通じて少しずつ成長していく過程を描く。一生懸命練習して上達していく充実感、同級生とつるんだ他愛ない時間も楽しい、一方で努力が評価されない悔しさや仲間が辞めていく淋しさも味わう。そのあたりで喜怒哀楽を言葉にできず、はにかんだ表情を見せる主人公の少年が初々しい。

中学校に入学した克久は、音楽室から聞こえてきたドラムの響きに誘われて吹奏楽部に入部、ドラムパートに配属される。スティックを揃え部活に打ち込むが、夏の定期演奏会のメンバーから外されてしまう。

迷った時は背中を押し、目標に向かって一心に頑張っている時は静かに見守る。音楽室の一羽のうさぎが音楽に関わっている克久に寄り添っている。そして、うさぎは、打楽器に合わせて身をくねらせたり、じっと佇んでいたりと、いつも気持ちを抑えてもやもや感を抱えたままやり過ごしてしまう克久の心情を代弁する。ただ、うさぎの動きもまた象徴的とまでは言えず、その感情表現は控えめ。それでも、ティンパニ奏者を勧められた時ははっきりと己の意志を先生に伝えられるほどには、克久は自我を確立させていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

しかし、凡庸なカメラワークの下で繰り広げられる間延びしたセリフ回しはテンポが悪く、何より音楽がテーマにもかかわらず映像に躍動感がないのは残念。素人に近い出演者を使って日常のリアリティを出そうという狙いは一部成功しているものの、生徒たちのキャラクターから個性やみずみずしさを奪い、ドラマチックな展開もないまま平板に終わる。不登校だった友人に自分から声をかけられる程度に大人になった克久の姿は救いだったが。。。

オススメ度 ★★

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