こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダラス・バイヤーズクラブ

otello2014-01-14

ダラス・バイヤーズクラブ DALLAS BUYERS CLUB

監督 ジャン=マルク・ヴァレ
出演 マシュー・マコノヒー/ジャレッド・レト/ジェニファー・ガーナー/デニス・オヘア/スティーヴ・ザーン/グリフィン・ダン
ナンバー 5
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

酒と女とドラッグと博打。刹那的な暮らしに甘んじていた男は命の期限を告げられて、初めて真剣に己と向き合う。信じる道を進むために権威を疑い常識に水を差し権力に歯向かう彼を支えているのは、患者を食い物にする医者と製薬会社への怒り。物語は末期のエイズ患者が自ら実験台となって薬効を証明した未認可薬やサプリメントを手に入れ、広く同病の患者に頒布しようと奮闘する過程を描く。差別と闘いつつ自身のゲイへの偏見も克服しながら政府機関と病院を敵に回す主人公は、骨と皮だけに痩せていても生への執念と社会への憤りを肉体から発散させている。そして、運命を悲観してあきらめるよりは、行動に移して未来を切り開こうとする思いこそ、人生を意味のあるものにすると訴える。

電気技師・ロンは感電して入院、医師からHIV感染で余命30日と宣告される。症状を抑えるための未認可薬を求めてメキシコに渡ったロンは、そこで効果が報告された様々な薬やサプリメントを試し米国内に持ち込む。

ゲイのレイヨンをビジネスパートナーにして、ロンは仕入れた未認可薬をゲイコミュニティのエイズ患者にさばき始める。会員制のクラブにした商売は大当たり、ロンは薬を求めて世界中を飛び回るビジネスマンに変身する。極度にやつれていたロンがほどなく生気を取り戻し、目標を得て以前とは人が変わって多忙で有意義な時間に追われる。一方でカネのない者は門前払いするなど、慈善事業とは一線を画しあくまで利益を追求する。そんな彼の人間的な魅力に、マシュー・マコノヒーが魂まで削るような役作りでリアリティをもたらしていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてロンの活動は製薬会社・病院・食品医薬品局から目をつけられるが、「個人が健康になる権利」を主張して徹底抗戦する。社会的に見放されたエイズ患者に救済の手を差し伸べるロンと、法を盾に取り締まろうとする当局。チンピラの然としたロンがいつしか友人や支援者・賛同者に囲まれている姿は、懸命に生きようとする勇気は周囲の人々にも伝染することを教えてくれる。

オススメ度 ★★★★

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