こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラッシュ プライドと友情

otello2014-02-04

ラッシュ プライドと友情 RUSH

監督 ロン・ハワード
出演 クリス・ヘムズワース/ダニエル・ブリュール/オリビア・ワイルド/アレクサンドラ・マリア・ララ/ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ
ナンバー 26
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

酒とセックスに溺れてはいても命知らずのステアリングで抜き去る男は、死の恐怖をスピードで克服する。繊細な感覚で車両の癖を見抜き的確な加速で逃げ切る男は、死をおそれ慎重にリスクに対処する。彼らの思いをあざ笑う運命の皮肉は、憎しみ合い倒すべき敵でありながらいつしか同じ道を選んだ者同士の友情を育んでいく。映画は1970年代に活躍した2人のレーサーの数度にわたる対決と葛藤を描く。視界の中心だけがクリアで周囲はぼやけてしまう、そんな地を這う車高のコックピットから見た映像は300キロ近い速度を体感させてくれる。

F3レースでハントの妨害で敗れたラウダは持参金付きでF1チームに合流、頭角を現す。ハントもスポンサーの好意でF1レーサーとなり、2人は年間優勝を争ってしのぎを削る。

執拗にラウダに挑発を繰り返すハント。ラウダは冷静に受け流し幼稚なハントをいなす。だが、いったんエンジンを点火すると抜きつ抜かれつ勝負はチェッカーフラッグが振られるまで分からない。時に違反ギリギリの走法を厭わないハントに対し、ラウダは計算ずくでアクセルを踏む。ウィーンの御曹司という育ちのよさと日常生活の節制が運転にも反映され、やはりモータースポーツすなわち人生に真摯な姿勢で臨むラウダが一歩リードする。そのあたり、いやな奴だが憎めないハントと真面目だが面白みのないラウダ、根は共通でも向いている方向は正反対のコインの表裏のような対比が妙味となり物語を盛り上げていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

悪コンディションのドイツGPでラウダは大やけどを負うが、奇跡的に復活を遂げる。ハントは自分がその原因を作ったと気にしている。お互いに、いちばん嫌いでいちばん勝ちたい相手、でもいちばん尊敬し唯一価値観を共有できる相手でもある。確かに少しは距離が縮まった、しかし和解などせず、牽制しあったまま。この、あくまで人間的な男たちの生き様は非常に魅力的だった。

オススメ度 ★★★*

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