こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エヴァの告白

otello2014-02-17

エヴァの告白 The Immigrant

監督 ジェームズ・グレイ
出演 マリオン・コティヤール/ホアキン・フェニックス/ジェレミー・レナー
ナンバー 36
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

手を伸ばせば届きそうなところで出迎えてくれた自由の女神。遙か大西洋を船で渡ってきた移民たちには自由とチャンスの象徴、なのに自分には微笑んでくれなかった。大それた野望があるわけではない、戦火の祖国を逃れてきた者にとっては、新たな弱肉強食のジャングルに放り込まれただけ。特技もない身に換金できるものは己の体のみ、そして彼女は罪に懊悩し罰に慄く。映画は、そんな社会の底辺で暮らすヒロインが、唯一の肉親である妹を救うためにしたたかに生き抜く姿を描く。世の中は好景気に沸いているのに貧困から抜け出せない不法就労者の現実は、21世紀の現代においても変わらない。愛や情けはいらない、現金しか信じられない彼女の心が哀しい。

移民管理局で入国拒否されたエヴァは病気の妹と隔離されるが、ブルーノの計らいでその場をしのぐ。ブルーノはエヴァをダンサー兼娼婦として働かせるが、いつしか彼女を愛し始める。

一方エヴァは劇場で見かけたマジシャンのエミールに口説かれる。ブルーノのおかげで糊口をしのげるが男としての興味はない、むしろ夢を語るエミールに惹かれるエヴァ。ふたりを天秤にかける態度を続けた結果、取り返しのつかない悲劇が起こってしまう。もちろんブルーノにも美しいエヴァを利用してひと儲けしようという下心はある。だが、ブルーノに助けてもらったのに踊り子仲間のカネをくすね、さらにブルーノを怒りを買う行為を繰り返す彼女に人間的な魅力は感じなかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

1920年代のニューヨークの風景が、ビトー・コルレオーネの少年・青年時代のような重厚で落ち着いた色調の映像で再現される。ところがそこで繰り広げられる物語は、成功や復讐、愛や苦悩といった人生に対する動機に乏しく、生きる喜びもない。せめてエヴァを、男たちを手玉にとってのし上がる悪女に変身させるくらいのドラマティックな展開を用意してほしかった。

オススメ度 ★★

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