こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

otello2014-03-03

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 NEBRASKA

監督 アレクサンダー・ペイン
出演 ブルース・ダーン/ウィル・フォーテ/ジューン・スキッブ/ステイシー・キーチ/ボブ・オーデンカーク
ナンバー 50
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

最後にゆっくりと語り合ったのはいつだろう。知らぬ間に頑固で偏屈なジイさんのなってしまった。疎遠にしてきたわけではないがあまり気に掛けなかったのも事実。そんな、騙されているのに気づかせようとしても耳を貸さない老いた父を持つ中年男の葛藤がリアルだ。物語は100万ドルの当選手紙を受け取った老人が、息子と共に賞金をもらいに行く過程を描く。道中、息子は父親の叶わなかった願いを察し、母親の衝撃の過去を聞かされ、両親もまた自分と同じく些事に悩み小事に幸せを感じる人間だったと知る。そして、大人になって初めて過ごす父親との濃密な時間のなかで、息子は父親がほんとうに求めていたものを理解していく。それはカネでは買えない、触れ合った思い出が紡ぎだすかけがえのない絆だ。

モンタナからネブラスカまで徒歩で行こうとするウディを見かねた息子のデイヴは、ウディとドライブの旅に出る。途中、ウディが生まれ育った小さな町に立ち寄り親戚や旧知の友人と顔を合わせるうちに、ウディは100万ドルが当たったと公言してしまう。

ウディとデイヴの訪問を歓迎していなかった親戚たちも、旧友との再会を喜んでいなかった町の人々も、当選の話を境に急になれなれしくなり、カネの無心を始める。これが一種の詐欺といくらデイヴが力説しても後の祭り、欲の皮を突っ張らせた人々に煩わされる一方で、合流した母親が若いころのモテ話を披露したりもする。デイヴはウディのみならず周囲の人々の振る舞いにも辟易するが、欲望に正直な彼らと接するうちに無難な道ばかり選んできた己を顧みる。老人たちが口にする、多分に美化した昔話が愛おしい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ウディも当選手紙がインチキだというのはわかっていたはず。でも、もう一度家族や隣人たちから注目されたかった、やりたいことをやってみたかっただけ、手紙はそのための口実にすぎない。人生の証を手に入れようとするウディの気持ちと、それを慮るデイヴの優しさが心に染みる作品だった。

オススメ度 ★★★*

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