こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サクラサク

otello2014-04-07

サクラサク

監督 田中光敏
出演 緒形直人/南果歩/矢野聖人/美山加恋/藤竜也/津田寛治/佐々木すみ江/大杉漣
ナンバー 81
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

あれほど可愛がってくれた父が壊れていく。ふと意識が飛ぶ瞬間がいつの間にか長くなり、雨の夜を徘徊し粗相をするようになる。そしてそんな父に妻も子も知らぬふりをしている。物語は、仕事一筋で家庭を顧みなかった男が、認知症を悪化させた父親の最期の願いを叶えるために旅に出る姿を描く。その過程で主人公は失った家族の絆を再建し、人生の宝物を取り戻していく。ボケてなお背筋をピンと伸ばしてダブルのスーツを粋に着こなす一方で、薄れていく自我に恐怖しながらも少年時代の思い出だけは鮮明。年老いた父を端正に演じる藤竜也の芝居がかった話し方が哀愁を誘う。

子育てを妻の昭子に押し付けてきた俊介は、同居の父・俊太郎の介護に誰もが無関心なのに腹を立てていた。ある日、俊太郎の昔話に出てくる福井県のお寺を探そうと、家族をミニバンに乗せる。だが、昭子は浮かない表情のままだった。

おそらく一家総出の旅行は初めてなのだろう、息子も娘も最初は乗り気ではなかったのに、道中温泉につかりごちそうに舌鼓を打つと俊介との距離を縮めていく。その間、実は息子が俊太郎のおむつを替えていた事実を知り、俊介は子供たちをまったく見ていなかったと反省する。その後咲子とも和解するなど、狭い空間で長時間過ごすうちに胸の内を吐き出し、お互いに理解する努力が足りなかったと気づく。家族の再発見、自動車での移動は新しい関係を構築する絶好の機会なのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて敦賀に到着、俊太郎のおぼろな記憶を頼りに、俊介たちは地蔵が並ぶお寺を探す。俊太郎の世話をする俊介の背中は確実に子供たちの脳裏に焼き付き、遠くない未来に子供に面倒をかける時の手本になる。親を大切にするのは、自分を大切にすることでもあるとこの作品は教えてくれる。ただ、老人問題も家族の軋轢も、登場人物の苦悩や葛藤といった内面への踏み込みが甘いのが気になったが。。。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓