こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ディス/コネクト

otello2014-04-12

ディス/コネクト DISCONNECT

監督 ヘンリー=アレックス・ルビン
出演 ジェイソン・ベイトマン/ホープ・デイヴィス/フランク・グリロ/ミカエル・ニクヴィスト/ポーラ・パットン/アンドレア・ライズブロー/アレクサンダー・スカルスガルド/マックス・シエリオット/コリン・フォード
ナンバー 85
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

暮らしを快適にするツールであるべきなのに、いつの間にか便利さに支配されている。そして小さな悪意や功名心、寂しさに付け込まれ、不信感を植え付けられていく。映画はネットに依存する男女を通じ、他者とのバーチャルなつながりとは何かを問う。家族にも言えない秘密をネットで出合った見知らぬ相手には明かしている。一方でいつしか秘密は拡散し思わぬ災いをもたらす。ネット中傷、未成年ポルノ、個人情報漏洩……ここで起きる出来事は明日誰もが当事者になるかもしれないほど身近でリアル、しかも被害者・加害者のどちらにもなりうる。所詮ネットの書き込みなど信用できない、しかし真実を明白にしてくれるのもネットなのだ。

恥ずかしい写真をネット上にばらまかれたベンは自殺を図る。TVレポーターのニーナはライブポルノサイトの少年を取材する。破産したデレックとシンディ夫婦は預金を盗んだ男を探し出す。

IT専門探偵・マイクにPCを調べてもらったデレックはシンディが深い悲しみ抱えていたと教えられる。ベンの父・リックもログを追ううちに気づかなかった息子の別の顔を発見する。そんな、家族がいるのに孤独な者たちがチャットに救われていた皮肉。また、ベンを追い詰めた少年たちのひとり・ジェイソンは罪悪感を覚えるが贖う勇気はない。それぞれが後悔と自責の念に押しつぶされそうになりながらさらなる問題に直面していく過程は重苦しく、その先にもっと厳しい事実が待ち受けていることを知りながらも後戻りできない彼らの苦悩がじりじりと胸を締め付ける。別々の事件の登場人物がゆるい関わり持つという構成が、現代社会の病巣を見事に抉り出していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて当事者たちはネットの向こう側の人々と対面、怒りと憎しみをたぎらせたまま当然のごとく暴走する。だが、そうした反応こそが生身の人間同士のぶつかり合いでもある。直接感情を伝え肉体で大切な家族を守ろうとする行為は、それはたとえ不毛な暴力であっても、ネットを介してしか築けない対人関係よりもずっと貴重なものに思えてくる。

オススメ度 ★★★★

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