こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

チョコレートドーナツ

otello2014-04-30

チョコレートドーナツ ANY DAY NOW

監督 トラヴィス・ファイン
出演 アラン・カミング/ギャレット・ディラハント/アイザック・レイヴァ/フランシス・フィッシャー/グレッグ・ヘンリー
ナンバー 100
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

不道徳なホモに男児の預けるのは危険。障害児は母親に育てられるべき。広く定着していた誤解と偏見に苦しむ男たちは、親に見捨てられたダウン症児を世話することで世間を変えようとする。同性愛が禁忌と考えられていた1979年の米国西海岸、人々は世の中に彼らが浸透するのを恐れ、排除しようする。映画は、劣悪な環境に置かれても声を上げる術のない子供の権利を守るためには何が必要なのか、2人のゲイが行政を敵に回して奮闘する姿を描く。裁判官や弁護士といった法曹界関係者に人間の本質を見抜く能力がなく、彼ら自身が差別を正義と信じている愚かさとは対照的に、夜の街をひとり彷徨する少年の背中が切なく哀しい。

オカマ歌手のルディは、育児放棄された隣室のダウン症児・マイクを引き取る決意をする。恋人の弁護士・ポールに相談し、服役中のマイクの母親に彼女が釈放されるまで後見人になるのを認めさせる。

ゲイをカミングアウトしているルディに対し、弁護士のポールは性癖を知られないように気を使い、ルディとの仲もいとこと偽っている。だが、マイクの前では “良きパパ”として振る舞い、心を閉ざしていたマイクは次第に障害児学級でも明るさを取り戻す。平気で部屋に男を連れ込むようなジャンキーの母に虐待されていたマイクは、生まれて初めて大人から愛され、自分にも存在価値があると気づいていく。オカマとダウン症児、家族や社会から疎外された者同士が小さな幸福を築いていく過程は、人は皆支え合って生きていると訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて同性愛がばれポールは失職、その後ルディとポールの同棲も大家に見つかり、マルコの養育権も取り上げられる。彼らは司法に直訴するが、壁は高く状況は不利になるばかり。誰と暮らすのが一番幸せなのか、マルコはきちんとした言葉で話せない。そんな彼らの願いを踏みにじった者たちへの手紙、偏狭な精神が産んだ悲劇が胸を締め付ける。

オススメ度 ★★★

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