こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バチカンで逢いましょう

otello2014-05-03

バチカンで逢いましょう Omamamia

監督 トミー・ヴィガント
出演 マリアンネ・ゼーゲブレヒト/ジャンカルロ・ジャンニーニ/アネット・フィラー/ミリアム・シュタイン/ラズ・デガン/ジョヴァンニ・エスポジト
ナンバー 103
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

愛する夫と子孫に恵まれ、カナダの大自然の中で過ごした時間は幸せだった。だが、残り少ない人生をケアしてくれるはずの娘は口うるさく、彼女は気詰まりを強いられている。そんな老女が目指したのはバチカン、法王に謁見するという長年の夢を叶えるために彼女は生来のバイタリティを取り戻し、向こう見ずなほどに大胆になる。もはや失うものは何もない、開き直りとも思える行動力で見知らぬ街を動き回る。物語は夫を亡くしたヒロインが異郷で出会った人々と新たな未来を見つける過程を描く。典型的なドイツ系カトリックらしい律義さを持つ彼女の家族と、おおらかで情熱的なイタリア人のキャラクター、それらの特徴は民族の血などではなく育った環境による違いであるとこの作品は訴える。

夫に先立たれたマルガレーテは娘のマリーが用意した老人ホームへの入居をを拒否、法王に会うためにローマに住む孫娘・マルティナのアパートに転がり込む。後日バチカンで出向くが怪しげな老人・のロレンツォに騙され、大事件を起こしてしまう。

ロレンツォの機転で事なきを得たマルガレーテは、彼の甥が経営するさびれたレストランを手伝う。パスタではなくオーストリア風、卵をふんだんに使った色鮮やかな彼女の料理は目を楽しませてくれる。一方でマルガレーテはロレンツォの協力を得て、法王に言葉をかけるチャンスを待ち続ける。田舎の人のいい世間知らずなおばあちゃんだったマルガレーテが、ロレンツォたちのおかげでたくましさを身に付けると、圧倒的な体格もチャーミングに見えてくる。その舞台となる、古代の遺跡から中世の石造りの建物まで、普通の市民の生活の中に溶け込んだローマの歴史的建造物が魅力的だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、心配したマリーがローマにやってきてマルガレーテを連れ戻そうとする。そして3代にわたる女たちの業と共に、明らかにされる秘密。それでも確かにマルガレーテの思いは秘伝のレシピと共に受け継がれていく。やや強引な展開もコミカルな風合いに中和され、年齢を重ねる素晴らしさを実感させてくれる映画だった。

オススメ度 ★★*

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