こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

WOOD JOB! 神去なあなあ日常

otello2014-05-12

WOOD JOB! 神去なあなあ日常

監督 矢口史靖
出演 染谷将太/長澤まさみ/伊藤英明/優香/西田尚美/マキタスポーツ/有福正志/近藤芳正/光石研/柄本明
ナンバー 108
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

森の奥のそのまた奥にそびえ立つ数十メートルはある “ご神木”に、ふんどし姿の男たちが斧を打ち込みのこぎりを引く。はるかな昔に植えられた巨木がゆっくりと倒れるとき、祖先への感謝と子孫の繁栄を願う樵たちの素朴な思いが圧倒的な迫力となってスクリーンに再現される。そこには自然と深くかかわり木の生育を生業としてきた彼らの、CGでは決して表現できない山の神への畏敬の念が込められていた。撮り直しのきかない危険な一発勝負、映画は荘厳な儀式をカメラに収めた事実だけで成功したと言っても過言ではない。物語は受験に失敗し軽い気持ちで林業研修生になった青年の成長を通じ、木材を生産するとはどういうことかを描く。過疎と後継者不足、それでも100年後を考えて仕事に打ち込む男たちは生命力にあふれ魅力的だ。

浪人が決まり彼女にもフラれた勇気は、偶然見つけた美女のチラシに惹かれ三重県の山村に赴く。1カ月の基礎研修の後、地元でも一番厳しいといわれる親方の元に送られ、余喜という男にしごかれる。

ケータイは圏外、近くの町まで車で2時間かかる山中の小さな集落、勇気は与喜の指導で早朝から日暮れまでこき使われる。だがそれは、都会育ちの勇気にとって新鮮な体験、肺いっぱい酸素濃い空気を吸い込んで、腹いっぱい飯を食い、目いっぱい体を使って作業をこなす。人間本来の営みに立ち返ったような単調でも充実感にあふれた日々に、帰る日を指折り数えていた勇気がいつしか村での滞在に心地よさを感じ始める。その過程はヒトがまだジャングルに住んでいた数百万年前の記憶が刺激されているかのよう。ほぼロケで撮影された、まさしく葉緑素の香りが漂ってきそうな瑞々しい映像がこの作品を支えている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてチラシの美女・直紀が近所でひとり暮らしをしていると知り、勇気は俄然張り切りだす。そして、山での生活にも慣れ、未熟でも林業に誇りを持ち、山で迷子になった子供を助けた勇気を、山の男たちは仲間と認める。何より、命がけの経験を通して一人前の仕事人になっていく勇気の背中が頼もしかった。

オススメ度 ★★★

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