300 スリーハンドレッド 帝国の進撃
300: Rise of an Empire
監督 ノーム・ムロ
出演 サリバン・ステイプルトン/エバ・グリーン/ レナ・ヘディ/ハンス・マシソン/ロドリゴ・サントロ
ナンバー 107
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
祖父伝来の土地を脅かす強大な帝国軍に対抗して、剣と楯を手にするのは理性を信じる一般市民。数倍の戦力もつ敵に、奇抜な作戦と死を恐れぬ勇気で民族の誇りを示す。映画は前作と同時期に起きたギリシア連合軍とペルシア軍の海戦を描く。振り下ろされる剣、飛来する矢、突き立てられる矛、傷口から飛び散る血、大きくうねる海と木の葉のように揺れる艦船。それら3D加工された映像は腹に響くサウンドと共に大迫力のヴィジュアルとなってスクリーンに再現される。色調を抑え陰影を強調するデジタル処理は実写と見事に融合し、バーチャルゆえに見る者は未曽有の臨場感に身を置く感覚を体験する。
女将軍・アルテミシアに率いられたペルシア海軍の大艦隊がエーゲ海を侵略、アテナイの参謀・テミストクレスは都市国家連合軍を組織してギリシア防衛に立ち上がる。緒戦はギリシア軍の大勝、だがすぐにペルシアの反撃が始まる。
はるか沖まで埋め尽くすペルシアのガレー船に機動力で挑むギリシア艦。艦側に体当たりの奇襲を仕掛けると、破壊された艦内は押しつぶされ浸水し漕ぎ手の奴隷たちの悲鳴が上がる。甲板では突撃してきたギリシア軍にペルシア兵は浮足立ちなすすべもない。志願兵中心のギリシア兵は表情豊かな人間として表現される一方、神となった王・クセルクセスの野望と復讐に燃えるアルテミシア以外のペルシア兵は感情を持たない駒に過ぎない。その後、体勢を立て直したペルシア軍はオイルを海中に撒き火炎弾で攻勢に出る。圧倒的な兵器・兵力を前にギリシア軍のモチベーションは信念のみ。獅子奮迅の活躍を見せるテミストクレスの姿は、ギリシア神話の英雄そのものだ。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
自由という理想を守るためには、その恩恵に与する個人が己の意志で戦に参加しなければならない。まるで東・南シナ海に進出する中国の領土的野心に対して、日本が取るべき態度を問われているかのようだった。平和とは血を流してこそ手に入れられるとこの作品は訴える。
オススメ度 ★★★