こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ぼくを探しに

otello2014-06-27

ぼくを探しに Attila Marcel

監督 シルバン・ショメ
出演 ギョーム・グイ/アンヌ・ル・ニ/ベルナデット・ラフォン/エレーヌ・バンサン/ルイス・レゴ/ファニー・トゥーロン
ナンバー 143
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

たとえしゃべれない赤ちゃんでも、目にした状況も耳にした言葉も肌に受けた触感も覚えている。ただ、大人になってから思い出せないだけ。まだ言語化されていないので、かえって鮮明なイメージとして脳裏に残っている。物語は、幼いころに両親の死を目の当たりにして口がきけなくなった青年が催眠退行でトラウマを取り除いていく過程を追う。2人の伯母とピアノの完結した小さな世界に住む主人公が、心という無限の空間を旅するうちに失われた時間を取り戻し本来の自分を発見していく姿は、真実こそが常に正しいと教えてくれる。誤った思い込みを訂正し、抑圧してきた感情を解放する。大切なのは寛容と感謝の気持ち。幸せを手に入れるためにはまず身近な人間を愛することから始めるべきなのだ。

ダンス教室のピアノ弾き・ポールは同じアパートに住むマダム・プルーストの部屋に迷い込み、不思議なハーブティーを振る舞われる。意識を遠のくと同時に、赤ちゃんだったころに見た光景がリアルによみがえってくる。

ママはいつも可愛がってくれた。何よりもビーチで食べた大きなアイスクリームの味が忘れられない。でもプロレスラーだったパパはジコチューで時々怖い顔をする。パパがママに暴力を振るっている場面は目を覆いたくなる。大人になっても家族写真からパパを切り離し、思い出の中からパパを締め出すポールに、幼児期の体験がその人の将来に及ぼす影響が顕著に表れる。深刻になりがちなテーマをジェリービーンズの色彩で甘くくるんだ映像がおとぎ話のような雰囲気を醸し出し、映画はポールの感覚と記憶を再現する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ポールはマダム・プルーストがいなくなっても催眠退行を止められず、自らハーブティーを飲んで過去に行こうとする。そこで初めて知った衝撃の事実。パパへの誤解と2人の伯母の隠し事が、声を奪い未来を捻じ曲げたと気づく。今の自分はすべていままでの自分が思い描いた結果、ネガティブ思考を捨て、“こうなりたい”と強く念じればよい。ポールの人生がもう一度始まる予感が胸をわくわくさせる。。。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓