こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

otello2014-07-12

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 GRACE OF MONACO

監督 オリヴィエ・ダアン
出演 ニコール・キッドマン/ティム・ロス/パズ・ヴェガ/フランク・ランジェラ/デレク・ジャコビ/パーカー・ポージー
ナンバー 160
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

一国の君主に見初められ豪奢な結婚式を挙げる。そんなおとぎ話を体現したのには、堅苦しい宮廷になじめず、不満と寂しさに身を打ちふるわせるばかり。いつまでたってもよそ者扱い、夫は助けてくれず相談できるのは神父のみ。だが自ら動いた時、道は開けていく。そして未曽有の国難に一歩も退かず、大国に立ち向かった勇気と機転が無力な女を伝説のプリンセスに成長させる。物語はキャリアの全盛期にハリウッドからモナコ公妃となったヒロインの孤独と苦悩、使命に目覚めた後の活躍を描く。愛されないと悲嘆していても何も変わらない、自分が愛する努力をして初めて他人に受け入れてもらえると、その背中は訴える。

モナコ公室に入って5年、旧弊と因習に縛られて窮屈な思いを募らせるグレースの元にヒッチコックが訪れ、新作の脚本を預けていく。その後、夫のレーニエ公と大ゲンカ、本格的にハリウッド復帰を考え始める。

折しもド・ゴール仏大統領から過酷な要求を突き付けられ国境を封鎖されるモナコ。レーニエは有効な手立てを打てず迷走する。しかし、中世から権謀術数の海を巧みに泳いできた歴史を学んだグレースは、モナコを守るために国民の信頼に足る公妃になる決意を固める。フランス語を学び街の人々と直に交流し、人気取りと言われてもやり続けて本気度を示す。“王族と結婚する意味”を理解したグレースがレーニエの心も取り戻していく過程は、“公妃”という役柄を演じるために己の人格を同化させるメソッド技法を実践する女優のようだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

レーニエが頼みの綱にしていた欧州サミットが失敗に終り、身内に裏切り者がいると知ったグレースは乾坤一擲の大勝負に出る。モナコに野心をむき出しにするド・ゴールに、愛による平和で応えるのだ。理想主義と揶揄されても構わない、言葉にして人を感動させ、行動で範を示す。ロイヤルファミリーの一員になるのは市民に対する義務を負うことでもあると、彼女の雄姿は教えてくれた。

オススメ度 ★★★

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