こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

世界一美しいボルドーの秘密

otello2014-07-15

世界一美しいボルドーの秘密 RED OBSESSION

監督 デヴィッド・ローチ/ワーウィック・ロス
出演 ロバート・パーカー/フランシス・フォード・コッポラ
ナンバー 159
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

気高い香りと芳醇な味わい、のど越しの滋味とほろ酔いの至福。それ自体が独立した芸術品となったワイン。ところが、その頂点に立つフランス・ボルドー地方のシャトーの超高級ワインが人生の楽しみではなく投資の対象となっている。なぜなら急激に財を成した中国人が予想外の高値で落札するから。果たして彼らはワインの持つ歴史的価値を認識しているのか。カメラはボルドーから香港・中国本土にまで足を伸ばし、中国のワイン事情にメスを入れる。今はまだ一部の特権階級の手にしか入らないが、14億人が日常的に口にするようになったら需要を賄いきれるのか。映画はワインをひとつの象徴に、中国人に席巻される資本主義の将来を占う。

2009年に続き10年も歴史に残るヴィンテージワインが生まれる。土壌、天候に恵まれ“100年に5回程度”といわれる当たり年が連続する幸運。だが、中国人富豪がワイン市場に参入したせいで、古くからの顧客には回らない。

ビリオネアの数で米国を抜いたと推測される中国、欲望はとどまることを知らず、高級ワインは飲むためだけでなく、所有欲を満たすためのコレクションとなっている。過去に中国を簒奪した西欧の自由とデモクラシーが、いまや赤い資本主義に呑み込まれている皮肉。かつて眠れる龍と揶揄した国が脅威となっているのに、シャトー経営者や評論家はビジネスチャンスととらえている。経済力をバックにフランス人の魂が根こそぎ買い漁られる、作り手が覚えるそんな危機感がリアルに伝わってくる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて中国では有名シャトーの偽物が出回り始める。模倣こそ進歩の基本という中国人はトルファンゴビ砂漠といった辺境でワイン生産を始める。「感心させるのではなく喜ばせるのがボルドーワインの使命」と言うシャトー経営者の信念を中国人が理解すれば、中国がワインでも“世界の工場”となる日がくるかもしれない。先進国が抱える「中国依存」の大きさをあらためて考えさせられる作品だった。

オススメ度 ★★★

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