こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

複製された男

otello2014-07-22

複製された男 ENEMY

監督 デニ・ヴィルヌーヴ
出演 ジェイク・ギレンホール/メラニー・ロラン/サラ・ガドン
ナンバー 168
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

同じ顔、同じ身長、同じ声。まったく同じ外見を持つ分身のような俳優を見つけた大学講師は、その男に会いに行く。偶然なのか運命なのか、夢なのか現実なのか、ふたりは胸の傷跡まで同じ。明度も彩度も低い靄のかかった映像、長回しのカット、思わせぶりな音楽・・・それらが不協和音を奏で、観客を出口のない迷宮にいざなっていく。やがて、他人には見分けはつかないほどそっくりな彼らは、お互いの妻や恋人を巻き込むと、心に邪な願望が芽生え始める。そして、映画は時間と空間がねじれる不快感を呼び、ちりばめられたメタファーとセリフの断片が不条理に拍車をかけていく。

友人に勧められたDVDを見たアダムは端役に自分とうり二つの俳優・アンソニーを発見、2人は面会の約束をする。双子の兄弟かと疑ったアダムは母親に尋ねるが否定、アンソニーも妻のヘレンから疑惑の目を向けられる。

アダムが感じる未知へのものへの好奇心と不安、アンソニーが覚える後ろめたさと焦り。恋人・メラニーとの関係がうまくいっていないアダムはヘレンに、ヘレンに浮気がばれたアンソニーはメラニーに興味を寄せていく。もはや後戻りはできない、相手のパートナーに手を出したのに、彼女たちに気付かれないほどアダムとアンソニーは酷似しているのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

結局、これはヘレンの嫉妬が産んだ妄想なのだ。彼女の妄想の中の主人公であるアンソニーが何らかの映画で大学講師・アダムの役を演じ、アダムになりきったアンソニーがアダムの視点でも物語る三重の複雑な入れ子構造。当然、この妄想の中ではヘレンは“神”なので、アンソニーの浮気もアダムの正体も知っている、だがふたりとも思うようには動いてくれない。だからこそ時々カマをかけて彼らに釘をさす。一方で、ヘレン自身も己の嫉妬の暴走を制御できない。ヘレンの無意識を象徴する巨大な蜘蛛が、「カオスとは未発見の秩序」という言葉に対する答えなのだろう。。。

オススメ度 ★★*

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