こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

思い出のマーニー

otello2014-07-23

思い出のマーニー

監督 米林宏昌
出演 高月彩良/有村架純
ナンバー 169
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

「私は私が嫌い」。体が弱いだけでなく養子として育てられていることにコンプレックスを抱いている少女は、誰にも心を開かず、何事も起きずに一日が終わるのを祈っている。どうせわかってもらえない、ひとりにしておいてほしい。心配されるのを負担に感じ、身近な愛情にすら気づかない。物語はそんなヒロインが転地療養に訪れた先で不思議な少女と出会い、本来の性格を取り戻していく姿を描く。遊んでいるよりも空想に浸るほうが好き、友達とのおしゃべりよりもスケッチしているほうが落ち着く。対人関係を構築できず、思いをうまく口にできない彼女が“毎日普通に過ごせるように”と七夕の短冊に願う場面が切なさと共感を呼ぶ。

喘息の治療のために避暑地を訪れた杏奈は、閉鎖された古い洋館で金髪の少女・マーニーと知り合い、すぐに打ち解け親友になる。杏奈はその後も毎夕会いに行くが、マーニーはまだ秘密を隠していた。

昼間は荒れた洋館なのにたそがれ時になるとにぎわいをみせるマーニーの洋館。杏奈もマーニーが現実のものではないと承知しているのだろう。それでもマーニーと一緒にいる間だけは素直で明るい杏奈でいられる。そしてマーニーもまた可憐な外見とは裏腹に屈折した日常を送っていたと知る。疎外された者同士が大人の目を盗んでふたりだけのひと時を共有する、子供時代にしか味わえない甘美な時間が懐かしさを誘う。月明かりを頼りに湿地帯を渡るボートの情景が、この上なく愛と思いやりに満ちた美しさを醸し出していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて東京から洋館に引っ越してきたサヤカがマーニーの日記を見つけ、杏奈に声をかけたのをきっかけに、マーニーと杏奈の友情に微妙な齟齬が生じる。さらにマーニーが口にするカズヒコという男の名前と破かれた日記の一部。杏奈はマーニーが体験した悲劇を聞かされ、自分がなぜ生まれ生かされているのかを学んでいく。愛されていないなんてただの思い込み、でもより愛されるためには、まず自分が自分を愛する努力をするべきとこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★

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