こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

LUCY ルーシー

otello2014-07-31

LUCY ルーシ

監督 リュック・ベッソン
出演 スカーレット・ヨハンソン/モーガン・フリーマン/チェ・ミンシク/アムール・ワケド/ジュリアン・リンド=タット
ナンバー 176
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

壁をはいずり天井でのたうち回る。“覚醒”したヒロインにとって重力は縛めとはならず、解放された肉体と精神は圧倒的なパワーとなってチンピラどもを一瞬で片付けてしまう。そして1000億個の神経細胞が活性化され科学の予想をはるかに超える身になった彼女は、自分は何者なのかを知るために真実を求める旅に出る。物語はチープな日常を送る娘が新開発の高性能ドラッグで思わぬ進化を遂げ、命を狙うギャングと戦ううちに人知の及ばぬ存在に昇華されていく過程を描く。現実的な作用の他に、視覚聴覚が鋭敏になり、すべての記憶がリプレイされ、DNAに保存された太古の人類からの記録すら解析する。それら彼女の脳内で起きる現象を再現した映像は、見ているだけでトリップした気分にさせてくれる。

新型ドラッグ・CPH4を腹部に埋め込まれ運び屋にされたルーシー。暴行された弾みでCPH4が漏れると脳機能が急激に増幅、体内にエネルギーが満ち溢れ思考も感覚も身体も驚異的な変貌を遂げる。

10%しか機能していない人間の脳を、20%に引き上げると『アベンジャーズ』級のスーパーヒーロー並みの能力になる。さらに通信を乗っ取り、ネット上のあらゆるデータを瞬時に吸収し、体組織の組成を変え、他人を思うままに操るまでになる。彼女の前ではカーチェイスすら成り立たず、パリの街でクルマを激走させても車体には傷一つつかない。やがてルーシー本人でさえも加速する超人化を止めらなくなり、CPH4を摂取し続けるしかない。映画は時にルーシーの内面の変化を短いカットで説明し、意識の暴走がどこに向かうのか暗示する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ギャングに追われながらも脳科学者の元にたどり着いたルーシーは、そこで更なるステージに上がろうとする。もはや英知を超越した超人類の領域。物理の法則は通用せず純粋な思惟のみが働く世界では、ギャングの暴力も科学者の知識も意味を持たず、ただ目を見開くばかり。アクションや愛よりも、人間の起源について問うという展開に、リュック・ベッソンの新たなチャレンジがうかがえる。最初の人類に知性をもたらしたのは、やっぱりETだったのか。。。

オススメ度 ★★★

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