こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バルフィ!人生に唄えば

otello2014-08-25

バルフィ!人生に唄えば

監督 アヌラーグ・バス
出演 ランビール・カプール/ プリヤンカー・チョープラー/イリヤーナー・デクルーズ
ナンバー 195
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

気持ちを伝えるのに言葉はいらない。眼差しに込めた真剣さと、身振り手振りがあればいい。そう信じる男は、むしろ聞こえず話せないハンディキャップを武器に、美しい女にアタックを繰り返す。全身で表現された彼の思いはやがて彼女の心を揺るがせ、愛がなくても安定した未来と貧しくても笑顔に満ちた暮らしを天秤にかけるほどになる。“最大のリスクはリスクを避けること”。親の決めた結婚に不満を持つくらいなら、自分で運命を選択すべきだったと後悔する彼女は、己の直感に従わなかったあらゆる人々の勇気のなさを象徴する。映画は一目ぼれした女性に言い寄る聾唖の主人公の型破りな生き方を描く。何事にもめげないポジティブ思考、文字通り都合の悪い雑音は耳に入らず持ち前の明るさでより良い結果を引き寄せる彼の姿は、強く願い、そして行動する大切さを教えてくれる。

街で見かけた美女・シュルティにあの手この手でバルフィは迫るが、婚約中を理由に相手にされない。だが、バルフィのユニークな口説き方にシュルティも徐々に警戒を解いていく。ところがシュルティの母がふたりの仲を引き裂いてしまう。

冒頭の大捕り物から、時計の針を戻して出会いを修正したり、切れ目を入れた街灯の倒れ方で占ったり、壊れた自転車のホイールが転がったりと、登場人物の状況と感情を説明する映画的イメージが満載で、この作品自体がバルフィと同様セリフによる説明を極力避ける。彼のボディランゲージはまさに人類の共通言語。特に銀行強盗のシーンはバルフィを演じたランビール・カプールの神髄、まるで無声映画のコメディを見ているような楽しい気分にさせてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で自閉症児のジルミル誘拐事件に巻き込まれたバルフィは、彼女と珍道中を続けるうちにいつしか愛し合う関係になる。ところが、そこに再会したシュルティが絡むなど物語は迷走する。インド映画らしくアイデアとサービスてんこ盛りなのはよいが、それが過剰なせいで集中力が続かなかった。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓