こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ザ・ヘラクレス

otello2014-09-10

ザ・ヘラクレス THE LEGEND OF HERCULES

監督 レニー・ハーリン
出演 ケラン・ラッツ/リアム・マッキンタイア/リアム・ギャリガン/スコット・アドキンス/ジョナサン・シェック/ロクサンヌ・マッキー/ガイア・ワイス
ナンバー 211
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

飛び交う矢、突撃する軍団、振り下ろされる剣、防御を固める盾、疾駆する馬……。映画はそれら戦場の息遣いをリアルに再現しようとする。古代ギリシア、神々と人間の距離が近くお互いに影響を与え合っていた戦乱の時代、物語は勇者として名を馳せた一人の英雄の復讐と冒険の旅を描く。神々の王を父に持ち美しい姫を愛しライオンを素手で絞殺する一方、義父や義兄に疎まれて謀略にはめられる。それでも希望を失わず、再起を誓う。そんな現代的な展開に改編されてはいるが、CGで処理された巨大なガレー船をはじめ石造りの街並み、満員の観衆で埋まる闘技場などで当時の空気を伝えようとする。主人公を演じたケラン・ラッツの鍛え上げられた大胸筋がギリシア人の肉体信仰を象徴する。

平和を願う王妃・アルクメネは神に祈りを捧げゼウスの子を出産する。子供はアルケイデスと名付けられ精悍な若者に成長するが、アンピトリュオン王の奸計でエジプト遠征に敗れて奴隷に売られ、剣闘士となってギリシアに戻ってくる。

ヘラクレスと名を変え自由の身を勝ち取ったのちは、戦友のソティリスと共に反乱軍を指揮し、圧政に苦しむ人々解放していく。その過程で、捕えられ四肢をつながれたヘラクレスがゼウスのパワーを得て、鎖ごと壁から引きちぎった石塊を振り回す場面は圧巻。その重量感と破壊力は、まさに神の奇跡を体現していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

しかしそれ以外の“見せ場”は、ただでさえ3Dメガネで光量が絞られるのに夜間の戦闘や薄暗い室内で格闘シーンが多く、何が起きているのかよく把握できない。スクリーンから武器や血しぶきが飛び出す大迫力のスペクタクルなるはずが、これでは効果が半減。いや、ほとんど生かされていない。アリーナでの2対2の肉弾戦もアイデアに乏しく、またストーリーも“借り物”感が強くオリジナリティに欠ける。レニー・ハーリンという監督名に惹かれたが、演出にかつての切れ味はなく期待は裏切られた。

オススメ度 ★*

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