こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ショート・ターム

otello2014-09-12

ショート・ターム SHORT TERM 12

監督 デスティン・ダニエル・クレットン
出演 ブリー・ラーソン/ジョン・ギャラガー・ジュニア/ステファニー・ベアトリス/ラミ・マレック/ケイトリン・デヴァー
ナンバー 213
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

愛された記憶こそが人生を豊かにし対人関係や自尊心を育てていく。しかし、様々な理由で家庭内暴力を受けた子供たちは心に大きな闇を抱え、自傷行為を繰り返す。映画は、家庭の事情で家族と離れて暮らす子供たちと、ふたりのケアハウス職員の日常を描く。黙っているかと思うと急に騒ぎ出す、クールに振る舞っていても突然暴れだす。感情をうまくコントロールできずつい爆発させる少年少女たちの姿に、新人職員同様“かわいそうな子供”という言葉が頭をよぎる。それでも、深い哀しみと痛みに真摯に耳を傾けてやれば彼らもまた胸襟を開くのだ。タコがサメに食べ物を与える切ない挿話が、他人との距離感をつかめない子供たちの孤独と苦悩を見事に象徴していた。

情緒障害のティーンエージャーを預かる施設で働くグレイスは同僚のメイソンと同棲中。ある日、父のDVを逃れて入所してきた少女・ジェイデンのケアを所長から頼まれる。聡明だが自傷癖のあるジェイデンにグレイスはかつての自分を投影する。

衝動を抑えられない子、憎悪をむき出しにする子、何事にも無関心な子。程度の差はあるが、彼らはみな虐待の原因が自身にあると誤解している。そんな子供たちを全面的に受け入れるグレイスとメイソン。己の存在を初めて肯定された子供たちは、悪癖から手を切り徐々に自信を取り戻していく。それは、その概念すら理解できなかった“希望”。血はつながっていなくてもいい、継父母に生きる喜びをもらったメイソンのユーモアと優しさが、この作品を明るくする。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方でメイソンの子を妊娠し、彼にプロポーズされても素直に喜べないグレイス。そして彼女の、大人になっても癒えない傷が亡霊となってよみがえってくる。ジェイデンを守るはずのグレイスが、逆にジェイデンをきっかけに彼女を苦しめてきた過去と対峙する。時に怒りと憎しみを解放する、自らの気持ちと向き合うことの大切さを改めて教えられた。

オススメ度 ★★★★

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