こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヘラクレス

otello2014-09-13

ヘラクレス HERCULES

監督 ブレット・ラトナー
出演 ドウェイン・ジョンソン/イアン・マクシェーン/ルーファス・シーウェル/ジョセフ・ファインズ/ピーター・ミュラン/ジョン・ハート/レベッカ・フェルグソン
ナンバー 214
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

強烈なパンチ1発で突進してくる歩兵をぶちのめし、疾駆する騎兵を馬ごと放り投げる。そのパワーは桁外れだが、実は負傷すれば血を流し、妻子を殺されては泣き叫び、三頭犬の悪夢にうなされる弱さも持つ。物語は圧倒的な戦闘能力を誇る傭兵部隊の隊長が自らの伝説を体現し、武勲を神話にまで昇華させる過程を描く。神の子というのも、蛇をひねりつぶしたのも、九首獣や大猪や獅子を倒したのも、側近が吹聴したホラ話で真偽は分からない。だが流布した噂に敵はおののき、市民は熱狂し、権力者は嫉妬する。武勇伝は他人の口で語られてこそ真価を発揮するのだ。一方で実戦では一転して蛮勇よりも守りの重要性を説き、生き残り主眼に置く戦法をとる。そんな現実的な兵法家のヒーロー像が新鮮だ。

40人もの盗賊を討伐したヘラクレスと部下たちは、トラキア王コティスに乞われ軍事顧問となる。訓練の最中レーソス軍に侵略された蛮族の救援に赴くが、敵の人海戦術にあい苦戦、多くの兵を失う。

何とか危機を脱したトラキア軍は軍備を整え、レーソス軍本隊の人身馬脚部隊と対峙する。ところが4本脚の人間は幻覚にすぎず、敵もまた心理戦を仕掛けてきている。自軍の戦力をいかに大きく見せ敵兵を欺くか。矢の雨が降り、槍衾が待ち受け、剣で斬り合う戦場では恐怖を抱いた方が負ける。セオリーを知り尽くしたヘラクレスの鮮やかな作戦でレーソス軍が総崩れになるシーンは、合戦の帰趨は火ぶたが切られる前の情報戦ですでに決まっていることを示す。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

勝利の美酒もつかの間、権力と復讐、カネと名誉といった欲望が一気に噴出するが、ヘラクレスは己の信条を貫く。それは、半神などではなく、あくまで誇り高き人間として生きる道を選んだ彼が真の英雄になった瞬間。21世紀になってもムキムキマッチョな肉体を誇示する俳優は後を絶たないが、シュワルツェネッガーの域に達しているのはドウェイン・ジョンソンだけだろう。重量感あふれる筋肉は神々しい美しさを放っていた。

オススメ度 ★★★

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